本項では、『対数関数の微分公式』 と 『問題の解き方』について解説します。
対数関数の微分は、以下の式により表されます。
上記の対数が、後述する自然対数 \(\large{\log_e x = \log x}\) であるとき、以下の式となります。
\(\large{\log_a x}\) の微分の式を、導関数の定義 から導きます。
導関数の定義から、\(\large{f(x)=\log_a x}\) の導関数を求めると、以下のようになります。 \begin{eqnarray} \large (\log_a x)' &\large =&\large \lim_{h \to 0}\frac{\log_a(x+h)-\log_a x}{h}\\[0.5em] &\large =&\large \lim_{h \to 0}\frac{1}{h}\log_a\frac{x+h}{x}\\[0.5em] &\large =&\large \lim_{h \to 0}\frac{1}{x}\frac{x}{h}\log_a \left(1+\frac{h}{x}\right)\\[0.5em] \end{eqnarray} ここで、\(\displaystyle\large{\frac{h}{x}=k}\) とおくと、\(\large{h \to 0}\) であるとき、\(\large{k \to 0}\) となるため、 \begin{eqnarray} \large (\log_a x)' &\large =&\large \lim_{k \to 0}\frac{1}{x}\frac{1}{k}\log_a \left(1+k\right) \\[0.5em] \large &\large =&\large \lim_{k \to 0}\frac{1}{x}\log_a \left(1+k\right)^{\frac{1}{k}} \\[0.5em] \end{eqnarray}
ここで、\(\displaystyle\large{\lim_{k \to 0}\left(1+k\right)^{\frac{1}{k}} }\) は極限値が存在し、約 \(\large{2.718\cdots}\) の値をとります。
$$\large{\lim_{k \to 0}\left(1+k\right)^{\frac{1}{k}} = 2.718 \cdots}$$
この極限値を『自然対数の底』といい、記号\(\large{e}\) で表します。
また、\(\large{e}\) が底の対数を自然対数といいます。
底\(\large{e}\) は省略されて、\(\large{\log_e x}\) を \(\large{\log x}\) とよく書かれます。
上記の自然対数の底\(\large{e\hspace{1pt}}\)の定義を使用すると、 \begin{eqnarray} \large (\log_a x)'&\large =&\large \lim_{k \to 0}\frac{1}{x}\log_a \left(1+k\right)^{\frac{1}{k}}\\[0.5em] \large &\large =&\large\frac{1}{x}\log_a e\\[0.5em] \large &\large =&\large\frac{1}{x \log a}\\[0.5em] \end{eqnarray} となることから、対数の微分公式 $$\large{(\log_a x)' = \frac{1}{x \log a}}$$ が導かれます。
\(\large{y=\log_a|x|}\) の微分は、以下の式により表されます。
上記の式を \(\displaystyle\large{(\log_a x)' = \frac{1}{x\log a}}\) から導きます。
\(\large{x}\)の値により場合分けします。
【\(\large{x>0}\) のとき】
\begin{eqnarray}
\large
(\log_a |x|)'&\large =&\large (\log_a x)'\\[0.5em]
\large
&\large =&\large\frac{1}{x \log a}\\[0.5em]
\end{eqnarray}
【\(\large{x < 0 }\) のとき】
\begin{eqnarray}
\large
(\log_a |x|)'&\large =&\large (\log_a (-x))'\\[0.5em]
\large
&\large =&\large\frac{1}{-x \log a} \cdot (-x)'\\[0.5em]
\large
&\large =&\large\frac{1}{x \log a} \\[0.5em]
\end{eqnarray}
以上から、\(\displaystyle\large{(\log_a |x|)'=\frac{1}{x \log a}}\) が導かれます。
対数関数の微分公式をまとめると、以下のようになります。
真数の絶対値の有無に関わらず式は同じですが、対数の真数条件から、\(\large{x}\) の定義域が異なることに注意が必要です。
\(\displaystyle\large{(\log_a x)'=\frac{1}{x \log a}}\) は真数条件から、 \(\large{x > 0}\) が定義域となります。
一方、\(\displaystyle\large{(\log_a |x|)'=\frac{1}{x \log a}}\) は真数条件から、 \(\large{|x| > 0}\) すなわち、\(\large{x \neq 0}\) が定義域となります。
本章では、対数関数の微分 に関連した問題について解説します。
問題(1)~(4)は、合成関数の微分を使用する問題です。
(解答と解説 : 問題(1) 問題(2) 問題(3) 問題(4))
問題(5)~(10)は、商の微分公式 や 三角関数の微分公式 を使用する問題です。
(解答と解説 : 問題(5) 問題(6) 問題(7) 問題(8) 問題(9) 問題(10))
【解答と解説】
本問は、以下の 対数関数の微分公式 を使用して微分します。
また、合成関数の微分公式 $$\large{ \{f(\hspace{1pt}g(x))\}' = f'(\hspace{1pt}g(x))\hspace{1pt}g'(x)}$$ を利用します。
与えられた関数を微分すると、以下のようになります。 \begin{eqnarray} \large y' &\large =&\large \frac{1}{(5x+3) \log 2} \cdot (5x+3)'\\[0.5em] \large &\large =&\large \frac{5}{(5x+3) \log 2}\\[0.5em] \end{eqnarray}
【解答と解説】
本問は、以下の 対数関数の微分公式 を使用して微分します。
また、合成関数の微分公式 $$\large{ \{f(\hspace{1pt}g(x))\}' = f'(\hspace{1pt}g(x))\hspace{1pt}g'(x)}$$ を利用して微分します。
与えられた関数を微分すると、以下のようになります。 \begin{eqnarray} \large y' &\large =&\large \frac{1}{(x^2+2) \log 3} \cdot (x^2+2)'\\[0.5em] &\large =&\large\frac{1}{(x^2+2) \log 3} \cdot 2x\\[0.5em] &\large =&\large\frac{2x}{(x^2+2) \log 3}\\[0.5em] \end{eqnarray}
【解答と解説】
本問は、以下の 自然対数の微分公式 を使用して微分します。
また、合成関数の微分公式 $$\large{ \{f(\hspace{1pt}g(x))\}' = f'(\hspace{1pt}g(x))\hspace{1pt}g'(x)}$$ を利用して微分します。
与えられた関数を微分すると、以下のようになります。 \begin{eqnarray} \large y' &\large =&\large 2(\log x) \cdot (\log x)'\\[0.5em] &\large =&\large 2\log x \cdot \frac{1}{x}\\[0.5em] &\large =&\large\frac{2 \log x}{x}\\[0.5em] \end{eqnarray}
【解答と解説】
本問は、以下の 絶対値のついた対数関数の微分公式 を使用して微分します。
与えられた関数を微分すると、以下のようになります。 \begin{eqnarray} \large y' &\large =&\large \frac{1}{x^3+1} \cdot (x^3+1)'\\[0.5em] &\large =&\large \frac{1}{x^3+1}\cdot 3x^2\\[0.5em] &\large =&\large \frac{3x^2}{x^3+1}\\[0.5em] \end{eqnarray}
【解答と解説】
本問は、商の微分公式
$$\large{\left\{\frac{f(x)}{g(x)}\right\}' = \frac{f'(x)g(x)-f(x)g'(x)}{\{g(x)\}^2}}$$
を利用します。
与えられた関数を微分すると、以下のようになります。 \begin{eqnarray} \large y' &\large =&\large \frac{(x^2)'\log x - x^2 (\log x)'}{(\log x)^2} \\[0.5em] &\large =&\large \frac{2x\log x - x^2 \cdot \frac{1}{x}}{(\log x)^2}\\[0.5em] &\large =&\large \frac{x(2\log x - 1)}{(\log x)^2}\\[0.5em] \end{eqnarray}
【解答と解説】
三角関数の微分から、
$$\large{(\sin x)' = \cos x}$$
を使用して微分します。
与えられた関数を微分すると、以下のようになります。 \begin{eqnarray} \large y' &\large =&\large \frac{1}{\sin x} \cdot (\sin x)'\\[0.5em] &\large =&\large \frac{\cos x}{\sin x}\\[0.5em] &\large =&\large \frac{1}{\tan x}\\[0.5em] \end{eqnarray}
【解答と解説】
三角関数の微分から、
$$\large{(\sin x)' = \cos x}$$
を使用して微分します。
また、対数の公式 \begin{eqnarray} \large \log_a M^b &\large =&\large b \log_a M\\[0.5em] \end{eqnarray} から式を変形します。
与えられた関数を変形すると、以下のようになります。 $$\large{\log \hspace{1pt}(\sin x+1)^2 = 2 \log (\sin x +1)}$$ この関数を微分すると、以下のようになります。 \begin{eqnarray} \large y' &\large =&\large 2 \cdot \frac{1}{\sin x +1} \cdot (\sin x +1)'\\[0.5em] &\large =&\large 2 \cdot \frac{1}{\sin x +1} \cdot \cos x\\[0.5em] &\large =&\large \frac{2 \cos x}{\sin x +1}\\[0.5em] \end{eqnarray}
【解答と解説】
本問は、以下の 絶対値のついた対数関数の微分公式 を使用して微分します。
問題の関数を微分すると、以下のようになります。 \begin{eqnarray} \large y' &\large =&\large \frac{1}{\log x} \cdot (\log x)'\\[0.5em] &\large =&\large \frac{1}{\log x} \cdot \frac{1}{x}\\[0.5em] &\large =&\large \frac{1}{x\log x}\\[0.5em] \end{eqnarray}
【解答と解説】
本問は、以下の対数の底の変換公式を使用して変形します。
問題の関数を底の変換公式から変形すると、以下のようになります。 $$\large{y=\log_x 2 = \frac{\log 2}{\log x}}$$
分子が1のときの商の微分公式 $$\large{\left\{\frac{1}{g(x)}\right\}' = -\frac{g'(x)}{\{g(x)\}^2}}$$ を利用して微分すると、以下のようになります。 \begin{eqnarray} \large y' &\large =&\large -\log 2 \cdot \frac{(\log x)'}{(\log x)^2}\\[0.5em] &\large =&\large -\log 2 \cdot \frac{1}{(\log x)^2} \cdot \frac{1}{x}\\[0.5em] &\large =&\large -\frac{\log 2}{x(\log x)^2} \\[0.5em] \end{eqnarray}
【解答と解説】
本問は、対数の公式
\begin{eqnarray}
\large
\log_a M^b &\large =&\large b \log_a M\\[0.5em]
\large
\log_a \frac{M}{N}&\large =&\large \log_a M - \log_a N\\[0.5em]
\end{eqnarray}
から、与えられた関数を以下のように変形します。
\begin{eqnarray}
\large
y &\large =&\large \log \sqrt{\frac{x^4-1}{x^4+1}}\\[0.5em]
\large
&\large =&\large \frac{1}{2} \log \frac{x^4-1}{x^4+1}\\[0.5em]
\large
&\large =&\large \frac{1}{2} (\log (x^4-1) - \log (x^4+1))\\[0.5em]
\end{eqnarray}
よって、問題の関数の微分を計算すると、以下のようになります。 \begin{eqnarray} \large y' &\large =&\large \frac{1}{2} \{(\log (x^4-1))' - (\log (x^4+1))'\}\\[0.5em] &\large =&\large \frac{1}{2} \left(\frac{1}{x^4-1}(x^4-1)' -\frac{1}{x^4+1}(x^4+1)'\right)\\[0.5em] &\large =&\large \frac{1}{2} \left(\frac{4x^3}{x^4-1} -\frac{4x^3}{x^4+1}\right)\\[0.5em] &\large =&\large \frac{1}{2} \frac{4x^3((x^4+1)-(x^4-1))}{(x^4-1)(x^4+1)}\\[0.5em] &\large =&\large \frac{1}{2} \frac{8x^3}{(x^4-1)(x^4+1)}\\[0.5em] &\large =&\large \frac{4x^3}{(x^4-1)(x^4+1)}\\[0.5em] \end{eqnarray}