本項では、『積の微分公式』 と 『問題の解き方』について解説します。
積の微分公式とは、2つの関数 \(\large{f(x),\hspace{5pt}g(x)}\) が微分可能であるときに成り立つ公式です。
例えば、以下のような 2つの関数の積で表される関数を微分するときに 積の微分公式が使用できます。
【例題】の解答
問題の関数において
\(\large{f(x)=x^2+1}\)、\(\large{g(x)=x+5}\) とおくと積の微分公式
$$\large{\{f(x)g(x)\}' = f'(x)g(x)+f(x)g'(x)}$$
から、
\begin{eqnarray}
\large
\{f(x)g(x)\}' &\large =&\large(x^2+1)'(x+5)+(x^2+1)(x+5)'\\[0.5em]
\large
&\large =&\large 2x\cdot(x+5)+(x^2+1)\cdot1 \\[0.5em]
\large
&\large =&\large 3x^2+10x+1 \\[0.5em]
\end{eqnarray}
と解くことができます。
積の微分公式を導関数の定義から導きます。
関数\(\large{f(x)}\) の 導関数\(\large{f'(x)}\) は、以下の式により定義されます。
上記の導関数の定義を使用して、積の微分公式を証明します。
公式の証明は、\(\large{\color{blue}{-f(x)g(x+h)}+\color{blue}{f(x)g(x+h)}}\) の項を加えることにより、\(\large{f'(x)}\) と \(\large{g'(x)}\) の定義式を作り出すところがポイントです。
ここで、 $$\large{ f'(x) = \lim_{h \to 0}\frac{f(x+h)-f(x)}{h}}$$ $$\large{g'(x) = \lim_{h \to 0}\frac{g(x+h)-g(x)}{h}}$$ であることから、 $$\large{\{f(x)g(x)\}' = f'(x)g(x)+f(x)g'(x)}$$ が導かれます。
3つの関数 \(\large{f(x)\hspace{1pt},\hspace{3pt}g(x)\hspace{1pt},\hspace{3pt}h(x)}\) が微分可能であるとき、以下の式が成り立ちます。
3つの関数の積の微分公式 は、積の微分公式から証明することができます。
3つの関数 \(\large{f(x)\hspace{1pt},\hspace{3pt}g(x)\hspace{1pt},\hspace{3pt}h(x)}\) が微分可能であるとする。
\(\large{v(x)=g(x)\cdot h(x)}\) とすると、積の微分公式から $$\large{\{f(x)v(x)\}'=f'(x)v(x)+f(x)v'(x)\hspace{7pt}(1)}$$ ここで、\(\large{v(x)=g(x)h(x)}\) から、 $$\large{v'(x)=\{g(x)h(x)\}'=g'(x)h(x)+g(x)h'(x)\hspace{7pt}(2)}$$ (2)式を(1)式に代入すると、
が導かれます。
本章では、積の微分公式 に関連した問題について解説します。
問題(1)~(3)は、関数の積の微分を計算する問題です。
(解答と解説 : 問題(1) 問題(2) 問題(3))
問題(4)~(8)は、三角関数や指数関数、対数関数を含んだ関数に、積の微分公式を適応する問題です。
(解答と解説 : 問題(4) 問題(5) 問題(6) 問題(7) 問題(8))
【解答と解説】
本問は、積の微分公式により関数を微分する問題です。
\(\large{f(x)=x^2+4}\)、\(\large{g(x)=x^3+1}\) とおくと積の微分公式 $$\large{\{f(x)g(x)\}' = f'(x)g(x)+f(x)g'(x)}$$ から、
と求めることができます。
【解答と解説】
本問は、積の微分公式により関数を微分する問題です。
\(\large{f(x)=x^3-2}\)、\(\large{g(x)=x^4-3}\) とおくと積の微分公式 $$\large{\{f(x)g(x)\}' = f'(x)g(x)+f(x)g'(x)}$$ から、
と求めることができます。
【解答と解説】
本問は、3つの関数の積の微分公式により関数を微分する問題です。
\(\large{f(x)=x}\)、\(\large{g(x)=x-1}\)、\(\large{h(x)=3x-2}\) とおくと3つの関数の積の微分公式
から、
と求めることができます。
【解答と解説】
本問は、三角関数を含む積の微分を求める問題です。
\(\large{f(x)=x^3}\)、\(\large{g(x)=\sin x}\) とおくと積の微分公式 $$\large{\{f(x)g(x)\}' = f'(x)g(x)+f(x)g'(x)}$$ と、三角関数の微分 $$\large{(\sin x)' = \cos x}$$ から、 \begin{eqnarray} \large \{f(x)g(x)\}' &\large =&\large(x^3)'\sin x+x^3(\sin x)'\\[0.5em] \large &\large =&\large 3x^2\sin x+x^3\cos x \\[0.5em] \end{eqnarray} となります。
【解答と解説】
本問は、三角関数を含む積の微分を求める問題です。
\(\large{f(x)=x}\)、\(\large{g(x)=\cos x}\) とおくと積の微分公式 $$\large{\{f(x)g(x)\}' = f'(x)g(x)+f(x)g'(x)}$$ と、三角関数の微分 $$\large{(\cos x)' = -\sin x}$$ から、 \begin{eqnarray} \large \{f(x)g(x)\}' &\large =&\large(x)'\cos x+x(\cos x)'\\[0.5em] \large &\large =&\large \cos x-x\sin x \\[0.5em] \end{eqnarray} となります。
【解答と解説】
本問は、三角関数を含む積の微分を求める問題です。
\(\large{f(x)=x^2}\)、\(\large{g(x)=\tan x}\) とおくと積の微分公式 $$\large{\{f(x)g(x)\}' = f'(x)g(x)+f(x)g'(x)}$$ と、三角関数の微分 $$\large{(\tan x)' = \frac{1}{\cos^2 x}}$$ から、 \begin{eqnarray} \large \{f(x)g(x)\}' &\large =&\large(x^2)'\tan x+x^2(\tan x)'\\[0.5em] \large &\large =&\large 2x\tan x+x^2\frac{1}{\cos^2 x} \\[0.5em] \end{eqnarray} となります。
【解答と解説】
本問は、指数関数を含む積の微分を求める問題です。
\(\large{f(x)=x^2}\)、\(\large{g(x)=e^x}\) とおくと積の微分公式 $$\large{\{f(x)g(x)\}' = f'(x)g(x)+f(x)g'(x)}$$ と、指数関数の微分 $$\large{(e^x)' = e^x}$$ から、 \begin{eqnarray} \large \{f(x)g(x)\}' &\large =&\large(x^2)'e^x+x^2(e^x)'\\[0.5em] \large &\large =&\large 2x e^x+x^2 e^x \\[0.5em] \large &\large =&\large xe^x(x+2) \\[0.5em] \end{eqnarray} となります。
【解答と解説】
本問は、対数関数を含む積の微分を求める問題です。
\(\large{f(x)=x}\)、\(\large{g(x)=\log x}\) とおくと積の微分公式 $$\large{\{f(x)g(x)\}' = f'(x)g(x)+f(x)g'(x)}$$ と、対数関数の微分 $$\large{(\log x)' = \frac{1}{x}}$$ から、 \begin{eqnarray} \large \{f(x)g(x)\}' &\large =&\large(x)'\log x+x(\log x)'\\[0.5em] \large &\large =&\large \log x+ x\cdot \frac{1}{x} \\[0.5em] \large &\large =&\large \log x +1 \\[0.5em] \end{eqnarray} となります。