本項では、『増減表の作り方』 と 『問題の解き方』について解説します。
増減表とは、関数の『定義域・増減・極値・凹凸・変曲点』などを一覧でまとめる表のことです。
増減表を作ることで、グラフを描くための情報を簡単に整理できるようになります。
本章では、まず増減表を作るときの基本となる 関数の増減 と 極大値・極小値 の調べ方について説明します。
関数\(\large{\hspace{1pt}f(x)}\) の増減 すなわち 『グラフが右上がりか、右下がりか』を調べるには 関数\(\large{\hspace{1pt}f(x)}\) を微分した \(\large{f'(x)}\) の符号を確認します。
ここで、\(\large{f'(x)}\) の符号 と 関数の増減には以下のような対応関係があります。
増減表を作るときは、まず \(\large{f'(x) = 0 }\) を満たす \(\large{x}\) を求めます。
次に \(\large{f'(x) = 0 }\) を満たす \(\large{x}\) を境界として \(\large{f'(x) }\) の符号を確認することで、関数の増減を調べます。
関数\(\large{\hspace{1pt}f(x)}\) の極大値と極小値では \(\large{f'(x)=0}\) となり、その前後で \(\large{f'(x)}\) の符号が変化します。
したがって、極大値と極小値を求めるためには \(\large{f'(x) = 0 }\) を満たす \(\large{x}\) の前後で \(\large{f'(x) }\) の符号がどのように変化するかを確認します。
関数の増減や極大値・極小値から増減表を作る例として、三次関数の問題について考えます。
まず、関数 \(\displaystyle \large{f(x)=2x^3-6x}\) を微分すると、 $$\large{f'(x)=6x^2-6}$$ となります。
\(\large{f'(x)=0}\) を解くと、 \begin{eqnarray} \large 6x^2-6 &\large =&\large 0\\[0.5em] \large x^2 &\large =&\large 1\\[0.5em] \large x &\large =&\large \pm 1\\[0.5em] \end{eqnarray}
ここで、\(\large{x=\pm 1}\) の前後における \(\displaystyle\large{f'(x)}\) の符号の変化を調べます。
\(\large{f'(x)=6x^2-6}\) より
\(\large{x < -1}\) のとき \(\large{f'(x)>0}\)
\(\large{-1 < x < 1\hspace{2pt}}\) のとき \(\large{f'(x)< 0}\)
\(\large{ x > 1}\) のとき \(\large{f'(x) > 0}\)
となります。
よって、関数 \(\displaystyle \large{f(x)}\) は、\(\large{x=-1}\) で極大値、\(\large{x=1}\) で極小値をとります。
以上から、増減表を作ると 以下のようになります。
増減表の二行目には \(\large{f'(x)}\) の符号、三行目には 極大値・極小値の値を入れます。
また、グラフの概形が分かりやすいように、矢印の記号(?,?)で関数の増減を示します。
この増減表からグラフを描くと、以下のようになります。
例題の増減表の作り方を整理すると、以下のようになります。
関数の増減や極大値・極小値に加え、『 グラフの凹凸 と 変曲点 』を調べることでより正確にグラフを描くことができます。
例題(1)の関数の増減のみを調べた増減表を以下に示します。
この増減表からグラフを描くと、以下のようになります。
増減表から①と③の区間では 『\(\large{x}\) が増加すると\(\large{y}\) が増加する』ことが分かります。
しかし、実際のグラフでは ①の区間は『\(\large{x}\) が増加すると\(\large{y}\) が増加する かつ 増加する割合が減る(上に凸)』となります。
また、③の区間 は『\(\large{x}\) が増加すると\(\large{y}\) が増加する かつ 増加する割合が増える(下に凸)』となります。
つまり、同じ右上がりのグラフでも、増加の仕方が変わることになります。
そのため、正確にグラフを描くためには関数の増減だけでなく、グラフの凹凸まで調べる必要があります。
関数\(\large{\hspace{1pt}f(x)}\) のグラフの凹凸は、\(\large{f''(x)}\) の符号を調べることで分かります。
下図のように、\(\large{f''(x)>0}\) の区間は 接線の傾きが増加する割合が増えるため、下に凸の形状となります。
一方、\(\large{f''(x) < 0}\) の区間は 接線の傾きの増加する割合が減るため、上に凸の形状となります。
関数\(\large{\hspace{1pt}f(x)}\) の変曲点とは、グラフの凹凸の変化する境界のことをいいます。
変曲点は関数\(\large{\hspace{1pt}f(x)}\) の二次導関数 \(\large{f''(x)}\) の符号の変化を調べることで分かります。
下図のように \(\large{f''(x)=0}\) となる変曲点で グラフの凹凸の形状が変化します。
関数の凹凸や変曲点を調べて増減表を作る例として、三次関数の問題について考えます。
例題(1)で \(\displaystyle \large{f(x)=2x^3-6x}\) の増減と極大値・極小値を調べた増減表を作成しました。
本問では、この続きとして 凹凸, 変曲点 を調べて増減表を作成します。
まず、関数 \(\displaystyle \large{f(x)=2x^3-6x}\) の二次導関数 \(\large{f''(x)}\) を求めると $$\large{f'(x)=6x^2-6}$$ $$\large{f''(x)=12x}$$ となります。
\(\large{f''(x)=0}\) を解くと、\(\large{x=0}\) となります。
ここで、\(\large{x=0}\) の前後における \(\displaystyle\large{f''(x)}\) の符号の変化を調べます。
\(\large{f''(x)=12x}\) より
\(\large{x < 0}\) のとき \(\large{f''(x)< 0}\)
\(\large{x > 0 }\) のとき \(\large{f''(x) > 0}\)
となります。
よって、関数 \(\displaystyle \large{f(x)}\) は、\(\large{x=0}\) で変曲点をとります。
以上から、増減表を作ると 以下のようになります。
増減表の三行目には \(\large{f''(x)}\) の符号を『+,-,0』で記入します。
また、グラフの凹凸まで調べた増減表では、増減と凹凸の両方が分かりやすいように丸い矢印の記号(?,?)を記入します。
本章では、増減表の作り方 に関連した問題について解説します。
【解答と解説】
本問は、四次関数の増減表を作る問題です。
まず、関数 \(\displaystyle \large{f(x)=x^4-2x^2}\) を微分して、極値の座標の候補を求めます。
\(\displaystyle\large{f(x)=x^4-2x^2}\) のとき、\(\displaystyle\large{f'(x)=4x^3-4x}\) となります。
\(\large{f'(x)=0}\) を解くと、 \begin{eqnarray} \large 4x^3-4x &\large =&\large 0\\[0.5em] \large 4x(x^2-1) &\large =&\large 0\\[0.5em] \large 4x(x+1)(x-1) &\large =&\large 0\\[0.5em] \end{eqnarray}
したがって、\(\large{x=-1,\hspace{2pt}0,\hspace{2pt}1}\) のとき \(\large{f'(x)=0}\) となります。
ここで、\(\displaystyle\large{f'(x)}\) の符号を調べます。
\(\large{x < -1}\) のとき \(\large{f'(x) < 0}\)
\(\large{-1 < x < 0}\) のとき \(\large{f'(x) > 0}\)
\(\large{0 < x < 1}\) のとき \(\large{f'(x) < 0}\)
\(\large{ x > 1}\) のとき \(\large{f'(x) > 0}\)
以上から、関数 \(\displaystyle \large{f(x)}\) は、\(\large{x=-1,\hspace{1pt}1}\) で極小値、\(\large{x=0}\) で極大値をとります。
次に、関数 \(\displaystyle \large{f'(x)=4x^3-4x}\) を微分して、変曲点の座標の候補を求めます。
\(\displaystyle\large{f'(x)=4x^3-4x}\) のとき、\(\displaystyle\large{f''(x)=12x^2-4}\) となります。
\(\large{f''(x)=0}\) を解くと、 \begin{eqnarray} \large 12x^2-4 &\large =&\large 0\\[0.5em] \large x^2 &\large =&\large \frac{1}{3}\\[0.5em] \large x &\large =&\large \pm \frac{1}{\sqrt{3}}\\[0.5em] \end{eqnarray}
ここで、\(\displaystyle\large{f''(x)}\) の符号を調べます。
\(\displaystyle\large{x < -\frac{1}{\sqrt{3}}}\) のとき \(\large{f''(x) > 0}\)
\(\displaystyle\large{-\frac{1}{\sqrt{3}} < x < \frac{1}{\sqrt{3}}}\) のとき \(\large{f''(x) < 0}\)
\(\displaystyle\large{ x > \frac{1}{\sqrt{3}}}\) のとき \(\large{f''(x) > 0}\)
以上から、関数 \(\displaystyle \large{f(x)}\) は、\(\displaystyle\large{x=-\frac{1}{\sqrt{3}},\hspace{1pt}\frac{1}{\sqrt{3}}}\) に変曲点を持ちます。
したがって、増減表を作ると 以下のようになります。
また、問題の四次関数のグラフは、以下のようになります。
【解答と解説】
本問は、対数関数を含む関数の増減表を作る問題です。
まず、対数の真数条件から \(\large{x}\) の定義域は \(\large{x>0}\) となります。
問題の関数は、自然対数の微分 $$\large{(\log x)' = \frac{1}{x}}$$ と、商の微分公式 $$\large{\left\{\frac{f(x)}{g(x)}\right\}' = \frac{f'(x)g(x)-f(x)g'(x)}{\{g(x)\}^2}}$$ を利用して微分します。
関数 \(\displaystyle \large{f(x)=\frac{\log x}{x}}\) を微分して、極値の座標の候補を求めます。
商の微分公式から、 \begin{eqnarray} \large f'(x) &\large =&\large \frac{(\log x)'\cdot x - \log x \cdot (x)'}{x^2}\\[0.5em] \large &\large =&\large \frac{\frac{1}{x} \cdot x - \log x \cdot 1}{x^2}\\[0.5em] \large &\large =&\large \frac{1 - \log x }{x^2}\\[0.5em] \end{eqnarray} となります。
\(\large{f'(x)=0}\) を解くと、 \begin{eqnarray} \large 1 - \log x &\large =&\large 0\\[0.5em] \large \log x &\large =&\large 1 \\[0.5em] \large x &\large =&\large e\\[0.5em] \end{eqnarray}
したがって、\(\large{x=e}\) のとき \(\large{f'(x)=0}\) となります。
ここで、\(\displaystyle\large{f'(x)}\) の符号を調べます。
\(\large{0 < x < e}\) のとき \(\large{f'(x) > 0}\)
\(\large{ x > e}\) のとき \(\large{f'(x) < 0}\)
以上から、関数 \(\displaystyle \large{f(x)}\) は、\(\large{x=e }\) で極大値をとります。
次に、関数 \(\displaystyle \large{f'(x)=\frac{1 - \log x }{x^2}}\) を微分して、変曲点の座標の候補を求めます。
商の微分公式から、 \begin{eqnarray} \large f''(x) &\large =&\large \frac{(1 - \log x)'\cdot x^2 - (1 - \log x)\cdot (x^2)'}{x^4}\\[0.5em] \large &\large =&\large \frac{( - \frac{1}{x})\cdot x^2 - (1 - \log x)\cdot (2x)}{x^4}\\[0.5em] \large &\large =&\large \frac{2\log x -3 }{x^3}\\[0.5em] \end{eqnarray} となります。
\(\large{f''(x)=0}\) を解くと、 \begin{eqnarray} \large 2\log x -3 &\large =&\large 0\\[0.5em] \large \log x &\large =&\large \frac{3}{2}\\[0.5em] \large x &\large =&\large e^{\frac{3}{2}}\\[0.5em] \end{eqnarray}
ここで、\(\displaystyle\large{f''(x)}\) の符号を調べます。
\(\displaystyle\large{0 < x < e^{\frac{3}{2}}}\) のとき \(\large{f''(x) < 0}\)
\(\displaystyle\large{ x > e^{\frac{3}{2}}}\) のとき \(\large{f''(x) > 0}\)
以上から、関数 \(\displaystyle \large{f(x)}\) は、\(\displaystyle\large{x=e^{\frac{3}{2}}}\) に変曲点を持ちます。
したがって、増減表を作ると 以下のようになります。
また、問題のグラフは以下のようになります。