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ガウス記号を含む関数の極限

本項では、『ガウス記号の意味とグラフ』や『ガウス記号の極限の問題と解き方』について解説します。

【1】ガウス記号とは

ガウス記号とは \(\large{[1.5]\hspace{1pt},\hspace{3pt}[2]\hspace{1pt},\hspace{3pt}[x]}\) など \(\large{[\hspace{5pt}]}\) を使用した記号です。

ガウス記号は、\(\large{[\hspace{5pt}]}\) 内の数を超えない最大の整数の値を意味します。

\(\large{X}\) を実数、\(\large{n}\) を整数とすると、ガウス記号は以下のように表せます。

  【 ガウス記号 】
\(\large{X}\) を実数、\(\large{n}\) を整数としたとき、
\(\large{n \leqq X < n+1}\) であるならば、
\(\large{[X]=n}\) となる

【1-1】ガウス記号の数値例

例えば、\(\large{X=1.5}\) のときは $$\large{1 \leqq 1.5 < 2}$$ であることから、 $$\large{[1.5]=1}$$ となります。

また、正の数の数値例として \(\large{[1.999]=1\hspace{1pt},\hspace{2pt}[2]=2\hspace{1pt},\hspace{2pt}[2.5]=2}\) などがあります。

一方、負の数の数値例として \(\large{[-1.001]=-2\hspace{1pt},\hspace{2pt}[-1]=-1\hspace{1pt},\hspace{2pt}[-0.5]=-1}\) などがあります。

上記の数値例から、ガウス記号とは
値が小さくなる方向に整数となるように小数点以下を切り下げる
操作であることが分かります。

(負の数の数値例から分かるように『小数点以下を切り捨てる』操作ではない点に注意が必要です。)

【1-2】ガウス記号のグラフ

ガウス記号を使用した 関数 \(\large{y=[x]}\) のグラフが以下のようになります。

ガウス記号を含む関数y=[x]のグラフ

関数 \(\large{y=[x]}\) のグラフの特徴として、\(\large{x}\) が整数 \(\large{n}\) に一致する位置でグラフが途切れるという特徴があります。

【2】問題と解き方

本章では、ガウス記号の極限 に関連した問題について解説します。

問題.1
関数\(\large{f(x)=[x]}\) は \(\large{x = 1}\) で連続であるか調べよ。
問題.2
関数\(\large{f(x)=x[x]}\) は \(\large{x = 0}\) で連続であるか調べよ。

問題1, 2 は ガウス記号を含む関数の連続性の問題です。
(解答と解説 : 問題1 問題2)

問題.3
次の極限を求めよ
\(\displaystyle\large{\lim_{x \to \infty}\frac{[x]}{x}}\)
問題.4
次の極限を求めよ
\(\displaystyle\large{\lim_{x \to \infty}\frac{[\sqrt{x}\hspace{2pt}]-x}{x}}\)

問題3, 4 は ガウス記号を含む関数の極限の問題です。
(解答と解説 : 問題3 問題4)

問題.1 ガウス記号を含む関数の連続性

問題.1
関数\(\large{f(x)=[x]}\) は \(\large{x = 1}\) で連続であるか調べよ。

【解答と解説】
関数 \(\large{f(x)}\) が \(\large{x=a}\) で連続であるかを調べるには、以下が成り立つかどうかを確かめます。

  【 関数の連続 】
関数 \(\large{y=f(x)}\) が \(\large{x=a}\) で連続であるとき
\(\displaystyle\large{\lim_{h \to a}f(a)}\) が存在し、その値が \(\large{f(a)}\) に等しい

まず、極限 \(\displaystyle\large{\lim_{x \to 1}[x]}\) が存在するかを確かめるため、関数\(\large{f(x)}\) の右側極限と左側極限を調べます。

ここで、関数 \(\large{y=[x]}\) のグラフを示します。 ガウス記号を含む関数y=[x]のグラフ

上図から、関数 \(\large{f(x)}\) の右側極限は $$\large{\lim_{x \to 1+0}[x] = 1}$$ 関数 \(\large{f(x)}\) の左側極限は $$\large{\lim_{x \to 1-0}[x] = 0}$$ よって、右側極限と左側極限の値が一致しないため、極限 \(\displaystyle\large{\lim_{x \to 1}[x]}\) は存在しません。

したがって、関数\(\large{f(x)=[x]}\) は \(\large{x = 1}\) で連続ではありません。

問題.2 ガウス記号を含む関数の連続性

問題.2
関数\(\large{f(x)=x[x]}\) は \(\large{x = 0}\) で連続であるか調べよ。

問題1と同様に、まず極限 \(\displaystyle\large{\lim_{x \to 0}x[x]}\) が存在するかを確かめるため、関数\(\large{f(x)}\) の右側極限と左側極限を調べます。

ここで、問題の関数はグラフの形状をすぐにイメージすることが難しいため、以下の極限値の性質を利用します。

  【 極限値の性質 】
\(\displaystyle\large{\lim_{x \to a}g(x) = \alpha\hspace{2pt},\hspace{4pt}}\)\(\large{\displaystyle\lim_{x \to a}h(x) = \beta}\) のとき
\(\displaystyle\large{\lim_{x \to a}g(x)\hspace{1pt}h(x) =\alpha\hspace{1pt}\beta}\)

\(\large{g(x)=x\hspace{1pt},\hspace{3pt}h(x)=[x]}\) とします。

関数 \(\large{g(x)}\) の \(\large{x \to 0}\) の右側極限は $$\large{\lim_{x \to +0}x = 0}$$ 関数 \(\large{g(x)}\) の \(\large{x \to 0}\) の左側極限は $$\large{\lim_{x \to -0}x = 0}$$ となります。

また、関数 \(\large{h(x)}\) の \(\large{x \to 0}\) の右側極限は $$\large{\lim_{x \to +0}[x] = 0}$$ 関数 \(\large{h(x)}\) の \(\large{x \to 0}\) の左側極限は $$\large{\lim_{x \to -0}[x] = -1}$$ となります。

したがって、極限値の性質から $$\large{\lim_{x \to +0}x[x] =0\cdot0 = 0}$$ $$\large{\lim_{x \to -0}x[x] = 0\cdot(-1) = 0}$$ すなわち、右側極限と左側極限が一致することから、関数\(\large{f(x)=x[x]}\) の \(\large{x = 0}\) における極限 \(\displaystyle\large{\lim_{x \to 0}x[x]}\) は存在します。

また、\(\large{x=0}\) のとき \(\large{f(0)=0}\) であることから、
\(\displaystyle\large{\lim_{x \to 0}f(x)}\) が存在し、その値が \(\large{f(0)}\) に等しいことから、関数\(\large{f(x)}\) は \(\large{x=0}\) において連続となります。

参考として、\(\large{y=x[x]}\) のグラフを以下に示します。 ガウス記号を含む関数y=[x]のグラフ

問題.3 ガウス記号を含む関数の極限

問題.3
次の極限を求めよ
\(\displaystyle\large{\lim_{x \to \infty}\frac{[x]}{x}}\)

本問は、以下の『はさみうちの原理』 を利用する問題です。

  【 はさみうちの原理 】
\(\displaystyle\large{\lim_{x \to a}f(x) = \alpha\hspace{1pt},\hspace{2pt}\lim_{x \to a}g(x) = \beta}\) とする
\(\large{x}\) が \(\large{a}\) に近いとき、
常に \(\large{f(x) \leqq h(x) \leqq g(x)}\) かつ \(\large{\alpha = \beta}\)
ならば \(\displaystyle\large{\lim_{x \to a}h(x) = \alpha}\)

上記のはさみうちの原理を利用するためには、関数の大小関係 を導く必要があります。

ガウス記号を含む関数の場合は、以下の関係を利用する方法がよく使用されます。

  【 ガウス記号 】
\(\large{x}\) を実数、\(\large{n}\) を整数としたとき、
\(\large{n \leqq x < n+1}\) であるならば、
\(\large{[x]=n}\) となる

上記の関係から、 $$\large{[x] \leqq x < [x]+1}$$ が成り立ちます。

\(\large{x>0}\) の場合に上式を \(\large{x}\)で割ると、 $$\large{\frac{[x]}{x} \leqq 1 < \frac{[x]}{x} + \frac{1}{x}\hspace{15pt}(1)}$$ となります。

ここで、\(\large{(1)}\)式の左側の2項から、 $$\large{\frac{[x]}{x} \leqq 1\hspace{15pt}(2)}$$

また、\(\large{(1)}\)式の右側の2項から、 $$\large{1-\frac{1}{x} < \frac{[x]}{x}\hspace{15pt}(3)}$$

(2),(3)式から $$\large{1-\frac{1}{x} < \frac{[x]}{x} \leqq 1}$$

ここで、 $$\large{\lim_{x \to \infty}\left(1-\frac{1}{x}\right) = 1}$$ であることから、はさみうちの原理より $$\large{\lim_{x \to \infty}\frac{[x]}{x} = 1}$$ となります。

問題.4 ガウス記号を含む関数の極限

問題.4
次の極限を求めよ
\(\displaystyle\large{\lim_{x \to \infty}\frac{[\sqrt{x}\hspace{2pt}]-x}{x}}\)

問題3と同様に、『はさみうちの原理』を利用して極限値を求めます。

ガウス記号の以下の関係を利用します。

  【 ガウス記号 】
\(\large{X}\) を実数、\(\large{n}\) を整数としたとき、
\(\large{n \leqq X < n+1}\) であるならば、
\(\large{[X\hspace{1pt}]=n}\) となる

上記の関係において \(\large{X=\sqrt{x}}\) とすると、 $$\large{[\sqrt{x}\hspace{2pt}] \leqq \sqrt{x} < [\sqrt{x}\hspace{2pt}]+1}$$ が成り立ちます。

\(\large{x>0}\) の場合に上式を変形すると、 $$\large{\frac{[\sqrt{x}\hspace{1pt}]-x}{x} \leqq \frac{\sqrt{x}-x}{x} < \frac{[\sqrt{x}\hspace{1pt}]+1-x}{x}}$$ よって、 $$\large{\frac{[\sqrt{x}\hspace{1pt}]-x}{x} \leqq \frac{\sqrt{x}-x}{x} < \frac{[\sqrt{x}\hspace{1pt}]-x}{x}+\frac{1}{x}}$$ となります。

ここで、上式の左側の2項から、 $$\large{\frac{[\sqrt{x}\hspace{1pt}]-x}{x} \leqq \frac{\sqrt{x}-x}{x}\hspace{8pt}(4)}$$

また、右側の2項から、 $$\large{\frac{\sqrt{x}-x}{x}-\frac{1}{x} < \frac{[\sqrt{x}\hspace{1pt}]-x}{x}\hspace{8pt}(5)}$$

(4),(5)式から $$\large{\frac{\sqrt{x}-x}{x}-\frac{1}{x} < \frac{[\sqrt{x}\hspace{1pt}]-x}{x} \leqq \frac{\sqrt{x}-x}{x}\hspace{3pt}(6)}$$

(6)式の \(\large{x \to \infty}\) における左辺の極限値は $$\large{}$$ \begin{eqnarray} \large &&\large\lim_{x \to \infty}\left(\frac{\sqrt{x}-x}{x}-\frac{1}{x}\right)\\[0.5em] &\large =&\large \lim_{x \to \infty}\left(\frac{\sqrt{1/x}-1}{1}-\frac{1}{x}\right)\\[0.5em] \large &\large =&\large -1\\[0.5em] \end{eqnarray}

(6)式の \(\large{x \to \infty}\) における右辺の極限値は $$\large{}$$ \begin{eqnarray} \large &&\large\lim_{x \to \infty}\frac{\sqrt{x}-x}{x}\\[0.5em] &\large =&\large \lim_{x \to \infty}\frac{\sqrt{1/x}-1}{1}\\[0.5em] \large &\large =&\large -1\\[0.5em] \end{eqnarray}

したがって、はさみうちの原理から、 $$\large{\lim_{x \to \infty}{\frac{[\sqrt{x}\hspace{1pt}]-x}{x}}=-1}$$ となります。


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