本項では、『対数の定義と公式』、『底の変換公式』 など対数の基本的な性質について説明します。
また、対数の公式を利用した計算問題についても解説します。
指数の計算は 以下のように底が\(\large{\hspace{1pt}a\hspace{1pt}}\)、指数が\(\large{\hspace{1pt}p\hspace{1pt}}\)である値\(\large{\hspace{1pt}M\hspace{1pt}}\)を求める計算です。 $$\large{M = {\color{blue}{a}}^{\color{red}{p}}}$$
一方、対数の計算とは 底が\(\large{\boldsymbol{a}}\)、値が\(\large{\boldsymbol{M}}\) であるような指数\(\large{\hspace{1pt}\boldsymbol{p}}\) を求める計算です。対数は以下のように表記します。
$$\large{\color{red}{p}\color{black}{} = \log_{\color{blue}{a}} \color{black}{M}}$$
上式を『\(\large{a}\)を底とする\(\large{M}\)の対数』といいます。
例えば、指数計算 \(\large{3^2 = 9}\) を対数で表記すると、\(\large{2 = \log_3 9}\) となります。
このとき、\(\large{\log_3 9}\)は『\(\large{3}\) を底とする \(\large{9}\) の対数』といいます。
対数が \(\large{p = \log_a M}\) で表されるとき、\(\large{a}\)を底、\(\large{M}\)を真数といいます。
対数には、底\(\large{a}\) と 真数\(\large{M}\) に対して成り立つための条件が存在します。
真数\(\large{M}\)とは、指数計算で \(\large{M=a^p}\) と表される値です。
指数関数の性質から、全ての実数 \(\large{p}\) に対して \(\large{a^p>0}\)であるため、真数\(\large{M}\) は常に正の値となります。
上記の条件は、対数関数 \(\large{y=\log_2 x}\) など真数が文字式のときに、対数が成り立つための条件としてよく利用されます。
底が\(\large{a=2}\)、指数が\(\large{p=5}\)、真数が\(\large{M=32}\)であるので $$\large{5 = \log_2 32}$$
指数の計算から以下の計算式が成り立ちます。 $$\large{a^1 = a}$$ $$\large{a^0 = 1}$$ $$\large{a^{-1} = \frac{1}{a}}$$
上記の式を、対数の形式 \(\large{p = \log_a M}\) に書き換えると、以下のようにまとめられます。
また、指数の計算から、対数について以下の性質が導出されます。
公式を利用して、式を簡単にします。
対数の公式 \(\large{\log_a{MN} = \log_a M+ \log_a N}\) から
$$\displaystyle \large{ \log_2 6 + \log_2 \frac{1}{6} = \log_2 {(6 \times \frac{1}{6})}=\log_2 1}$$
さらに、対数の公式 \(\large{\log_a 1 = 0 }\) から
$$\displaystyle \large{ \log_2 1 = 0}$$
となります。
まず、真数を素因数分解します。 $$\large{\log_2 24 -\log_2 3 = \log_2 {(2^3 \cdot 3)} - \log_2 3}$$
対数の公式 \(\large{\log_a \frac{M}{N} = \log_a M - \log_a N}\) から $$\displaystyle \large{\log_2 {(2^3 \cdot 3)} - \log_2 3 = \log_2 2^3 }$$ さらに、対数の公式 \(\large{\log_a M^b = b \log_a M }\) から $$\displaystyle \large{ \log_2 2^3 = 3 \log_2 2 }$$ となります。さらに、対数の公式 \(\large{\log_a a = 1 }\) より $$\displaystyle \large{3 \log_2 2 =3}$$ と計算することができます。
対数の計算は、底を変換することで計算が簡単にできる場合があります。
対数の底を変換する公式として、以下の式があります。
上式で \(\large{b=c}\) とおくことで、対数の公式から \(\large{a}\) と \(\large{b}\) のみの変換公式となります。
底の変換公式 \(\displaystyle \large{\log_a b = \frac{\log_c b}{\log_c a}}\) を使用して底を \(\large{2}\) に変換します。 $$\large{\log_4 32 = \frac{\log_2 32}{\log_2 4}= \frac{\log_2 2^5}{\log_2 2^2}}$$ 対数の公式 \(\large{\log_a M^b = b \log_a M}\) から $$\large{\frac{\log_2 2^5}{\log_2 2^2} = \frac{5}{2}}$$
本章では、対数の計算の応用問題について解説します。
まず、以下のような問題について考えます。
まず、累乗根を含む \(\large{\log_3 \sqrt[4]{48}}\) を簡単にして式を整理します。
指数が有理数の場合の計算から 式中の累乗根を \(\large{a^b}\) の形式に変形します。
$$\large{\log_3 \sqrt[4]{48} = \log_3 48^\frac{1}{4}= \log_3 (2^4 \cdot 3)^\frac{1}{4}}$$
また、対数の公式 \(\large{\log_a M^b = b \log_a M}\) より
$$\large{\log_3 (2^4 \cdot 3)^\frac{1}{4} = \frac{1}{4}\log_3 (2^4 \cdot 3)}$$
さらに、対数の公式 \(\large{\log_a{MN} = \log_a M+ \log_a N}\)から
$$\large{\frac{1}{4}\log_3 (2^4 \cdot 3) = \frac{1}{4}( 4 \log_3 2 +\log_3 3)}$$
対数の公式 \(\large{\log_a a = 1 }\) より
$$\large{\frac{1}{4}( 4 \log_3 2 +\log_3 3)=\frac{1}{4}( 4 \log_3 2 +1)}$$
したがって、問題の対数の計算は以下のようになります。
$$\large{\log_3 \sqrt[4]{48} -\log_3 2 = \frac{1}{4}}$$
底の変換公式を使用して、底を \(\large{3}\) に統一します。
底の変換公式 \(\displaystyle \large {\log_a b = \frac{\log_c b}{\log_c a}}\)から \begin{eqnarray} \large \log_9 5 + \frac{1}{2}\log_\frac{1}{3} 5&=&\large \frac{\log_3 5}{\log_3 9} + \frac{1}{2}\frac{\log_3 5}{\log_3 \frac{1}{3}}\\ \large &=&\large \frac{\log_3 5}{\log_3 3^2} + \frac{1}{2}\frac{\log_3 5}{\log_3 3^{-1}}\\ \large &=&\large \frac{\log_3 5}{2} + \frac{1}{2}\frac{\log_3 5}{-1}\\ \large &=&\large 0\\ \end{eqnarray}
(1)対数の公式 \(\large{\log_a{MN} = \log_a M+ \log_a N}\) を利用して与えられた式を分解します。 \begin{eqnarray} \large \log_{10} 12&=&\large \log_{10} (2^2 \cdot 3)\\ \large &\large =&\large \log_{10} 2^2 + \log_{10} 3\\ \large &=&\large 2\log_{10} 2 + \log_{10} 3\\ \large &=&\large 2a + b\\ \end{eqnarray}
(2) \(\large{\log_{10} 15 = \log_{10} {(5 \times 3)}=\log_{10} 5 + \log_{10} 3 }\) であるため、そのまま\(\large{a,b}\)に置き換えできません。
そのため、 \(\large{5=\frac{10}{2}}\) であることを利用して式を分解します。
ここで、対数の公式 \(\large{\log_a \frac{M}{N} = \log_a M - \log_a N}\) から
\begin{eqnarray} \large \log_{10} \frac{10}{2} + \log_{10} 3 &=&\large \log_{10} {10} -\log_{10} 2 + \log_{10} 3\\ \large &\large =&\large 1-a+b\\ \end{eqnarray}与えられた値を \(\large{X}\) とおきます。 $$\large{10^{\log_{10} 8} = X}$$ \(\large{10^{\log_{10} 8} > 0}\) より真数条件を満たすため、両辺を \(\large{10}\) を底とする対数に変換できます。 $$\large{\log_{10} 10^{\log_{10} 8} = \log_{10} X}$$ 対数の公式 \(\large{\log_a M^b = b \log_a M}\) より $$\large{\log_{10} 8 \cdot \log_{10} 10 = \log_{10} X}$$ $$\large{\log_{10} 8 = \log_{10} X}$$ すなわち、 $$\large{X = 8}$$ したがって、求める値は $$\large{10^{\log_{10} 8} = 8}$$