本項では、『平方完成の使い方』や『公式の導出』、『平方完成の練習問題』について解説します。
二次関数の平方完成とは、二次関数の一般式"\(\large{\boldsymbol{y = a x^2 + bx +c}}\)"の形式を、"\(\large{\boldsymbol{y = a (x - p)^2 +q}}\)"の形式にすることをいいます。
二次関数の一般式が "\(\large{y = a x^2 + bx +c}\)" であるとき、"\(\large{y = a (x - p)^2 +q}\)" に変換するには、以下の式により \(\large{(p,q)}\) を計算します。
下図のように、二次関数を平方完成した \(\large{y = a (x - p)^2 +q}\) は、\(\large{y=ax^2}\) のグラフを \(\large{x}\)方向に \(\large{+p}\)、\(\large{y}\)方向に \(\large{+q}\) だけ平行移動したグラフとなります。
ここで、二次関数\(\large{y=ax^2}\)のグラフ は、頂点 \(\large{(0,0)}\) のグラフであるため、平行移動すると頂点の座標は \(\large{(p,q)}\) となります。
つまり、平方完成をすることで二次関数の式から グラフの頂点が(\(\large{\boldsymbol{p,q}}\))、軸が\(\large{\boldsymbol{x=p}}\) と簡単に読みとることができます。
このような性質から、平方完成は グラフの形状を把握する目的でよく使用されます。
また、頂点や軸から二次関数を決定する問題や、最大値・最小値を求める問題にも応用されます。
二次関数 \(\large{y = a x^2 + bx +c}\) の式を平方完成する公式を導出します。
まず、\(\large{ax^2+bx}\) から、係数\(\large{a}\)をくくり出します。 $$\large{y = a \left(x^2 + \frac{b}{a}x \right) +c}$$
上式から\(\displaystyle \large{\left(x + \frac{b}{2a} \right)^2}\)の項を作るため、上式中の\(\displaystyle \large{\left(x^2 + \frac{b}{a}x \right)}\)の括弧の中に\(\displaystyle \large{\left(\frac{b}{2a}\right)^2}\)を足します。次に、式全体の値が変化しないように、\(\displaystyle \large{-\left(\frac{b}{2a}\right)^2}\)を加えます(【補足】平方完成の式変形)。 \begin{eqnarray} \large y&\large=&\large a \left \lbrace x^2 + \frac{b}{a}x + \left(\frac{b}{2a}\right)^2 -\left(\frac{b}{2a}\right)^2 \right \rbrace +c\\ \large &\large=&\large a \left \lbrace x^2 + \frac{b}{a}x + \left(\frac{b}{2a}\right)^2 \right \rbrace -a \left(\frac{b}{2a} \right)^2 +c\\ \large &\large=&\large a \left(x + \frac{b}{2a}\right)^2 - \frac{b^2 -4ac}{4a} \\ \end{eqnarray}
以上から、平方完成を行うことができます。
ここで、\(\large{y = a (x - p)^2 +q}\) と比較すると、二次関数を平方完成するための公式が導けます。
上記のような平方完成をすることで、二次関数の頂点の座標が(\(\large{p,q}\))、軸が\(\large{x=q}\)であると求めることができます。
\(\displaystyle \large{\left(x+\frac{k}{2}\right)^2}\)を展開すると、以下のようになります。 $$\large{\left(x+\frac{k}{2}\right)^2 = x^2 + kx + \left(\frac{k}{2}\right)^2}$$ つまり、以下の関係式が成り立ちます。 $$\large{x^2 + kx = \left(x+\frac{k}{2}\right)^2 -\left(\frac{k}{2}\right)^2 }$$ したがって、\(\large{x^2 + kx}\)を\(\large{\left(x+\frac{k}{2}\right)^2}\)の形式に変形するためには、\(\large{x}\)の係数\(\large{k}\)を\(\large{2}\)で割り2乗した値を引く必要があることが分かります。
平方完成の式変形では、\(\displaystyle \large{k=\frac{b}{a}}\)であるため、\(\displaystyle \large{\frac{b}{a}}\)を\(\large{2}\)で割って2乗した\(\large{\left(\frac{b}{2a}\right)^2}\)を引きます。
二次関数の平方完成に関連した問題を解説します。
【解答と解説】
以下のような手順で平方完成を行います。
まず、\(\large{x^2}\)の係数である \(\large{2}\) で以下のようにくくり出します。 $$\displaystyle \large{y=2(x^2 - 2x) +3}$$
『\(\large{x}\)の係数 \(\large{2}\) を、\(\large{2}\)で割り2乗した値である\(\large{1}\) 』を、全体の値が変化しないように加えると、以下のようになります。 $$\displaystyle \large{y=2(x^2 - 2x +1 -1) +3}$$ 上式から、\(\large{(x-1)^2}\)の項を作り出します。 \begin{eqnarray} \large y&\large=&\large 2(x^2 - 2x +1) +1\\ \large &\large=&\large 2(x-1)^2 +1\\ \end{eqnarray}
したがって、頂点の座標は (\(\large{1,1}\))、軸は\(\large{x=1}\) となります。
ここで 平方完成の公式 で結果を確かめると、
\(\large{a=2,\hspace{2pt}b=-4,\hspace{2pt}c=3}\) となるため、以下のように \(\large{(p,q)}\) が求められます。
$$\large{p = -\frac{b}{2a}=1}$$
$$\large{q=-\frac{b^2 -4ac}{4a}=1}$$
したがって、頂点の座標は \(\large{(p,q)=(1,1)}\)、軸は \(\large{x=p=1}\) と確かめられます。
【解答と解説】
以下のような手順で平方完成を行います。
まず、\(\large{x^2}\) の係数である \(\large{3}\) で以下のようにくくり出します。 $$\displaystyle \large{y=3(x^2 + x) -1}$$
『\(\large{x}\)の係数 \(\large{1}\) を、\(\large{2}\) で割り2乗した値である\(\large{\left(\frac{1}{2}\right)^2}\) 』を、全体の値が変化しないように加えると、以下のようになります。 $$\displaystyle \large{y=3 \left \lbrace x^2 + x +\left(\frac{1}{2}\right)^2 -\left(\frac{1}{2}\right)^2 \right \rbrace -1}$$ 上式から、\(\large{(x+\frac{1}{2})^2}\)の項を作り出します。 \begin{eqnarray} \large y&\large=&\large 3 \left \lbrace x^2 + x + \left(\frac{1}{2}\right)^2 \right \rbrace -3 \left(\frac{1}{2}\right)^2 -1\\ \large &\large=&\large 3 \left (x+\frac{1}{2} \right )^2 -\frac{7}{4}\\ \end{eqnarray}
したがって、頂点の座標は \(\displaystyle \large{ \left(-\frac{1}{2},-\frac{7}{4} \right)}\)、軸は \(\displaystyle \large{x=-\frac{1}{2}}\) となります。