本項では、『三角関数を含む不等式』の問題と解法について解説します。
三角関数を含む不等式とは、 $$\displaystyle \large{\sin \theta \geqq \frac{1}{2},\hspace{3pt}\cos \theta > \frac{\sqrt{2}}{2}}$$ など三角関数を式に含む不等式のことをいいます。
まず、以下の基本的な不等式の問題の解き方について解説します。
まず、以下の三角関数の不等式について解説します。
三角関数の定義から \(\large{\sin \theta}\) は単位円の動径\(\large{\overline{OP}}\) の\(\large{y}\)座標の値を意味します。
したがって、単位円と \(\displaystyle \large{y=\frac{1}{2}}\) の交点を求め、交点より \(\large{y}\)座標の値が大きくなる単位円の角度\(\large{\theta}\) の範囲が求める不等式の解となります。
まず、交点を求めるため、以下の三角方程式を解きます。 $$\displaystyle \large{\sin \theta = \frac{1}{2}}$$
\(\large{0 \leqq \theta < 2\pi }\) の範囲で上式を解くと、 $$\displaystyle \large{\theta = \frac{\pi}{6},\hspace{3pt}\frac{5}{6}\pi}$$ となります。
この三角方程式の解を満たす動径を \(\large{\overline{OP_1}}\), \(\large{\overline{OP_2}}\) として単位円上に図示すると、以下のようになります。
上図の点\(\large{P_1}\), 点\(\large{P_2}\) より\(\large{y}\)座標の値が大きくなる単位円の範囲、すなわち 図中の赤線の範囲が、求める不等式の解の範囲となります。
したがって、求める解\(\large{\theta}\)は、 $$\large{\frac{\pi}{6} \leqq \theta \leqq \frac{5}{6}\pi}$$ となります。
次に、以下の三角関数の不等式について解説します。
まず、不等式を変形し、左辺を \(\large{\cos \theta}\) のみとなるように整理します。 $$\large{\cos \theta > \frac{\sqrt{2}}{2}}$$
ここで、問題(1)と同様に、以下の三角方程式を解くことを考えます。 $$\displaystyle \large{\cos \theta = \frac{\sqrt{2}}{2}}$$
\(\large{0 \leqq \theta < 2\pi }\) の範囲で上式を解くと、 $$\displaystyle \large{\theta = \frac{\pi}{4},\hspace{3pt}\frac{7}{4}\pi}$$ となります。
三角関数の定義から \(\large{\cos \theta}\) は単位円の動径\(\large{\overline{OP}}\) の\(\large{x}\)座標の値を意味します。
したがって、\(\displaystyle \large{x= \frac{\sqrt{2}}{2}}\)より \(\large{x}\)座標の値が大きくなる単位円の角度\(\large{\theta}\) の範囲が求める不等式の解となります。
上図の点\(\large{P_1}\), 点\(\large{P_2}\) より\(\large{x}\)座標の値が大きくなる単位円の範囲、すなわち 図中の赤線の範囲が、求める不等式の解の範囲となります。
ここで、角度\(\large{\theta}\) の範囲が \(\large{0 \leqq \theta < 2\pi }\) であることから、赤い線で示された領域の角度は 2つの範囲に分けられることに注意が必要です。
上図から、求める解\(\large{\theta}\)は、 $$\large{0 \leqq \theta < \frac{\pi}{4},\hspace{3pt}\frac{7}{4}\pi < \theta < 2\pi}$$ となります。
次に、以下の三角関数の不等式について解説します。
まず、問題(1)と同様に、以下の三角方程式を解くことを考えます。 $$\displaystyle \large{\tan \theta = \sqrt{3}}$$
\(\large{0 \leqq \theta < 2\pi }\) の範囲で上式を解くと、 $$\displaystyle \large{\theta = \frac{\pi}{3},\hspace{3pt}\frac{4}{3}\pi}$$ となります。
三角関数の定義から \(\large{\tan \theta}\) は単位円の動径\(\large{\overline{OP}}\) を延長した直線と \(\large{x=1}\) の直線の交点の \(\large{y}\)座標を意味します。
上図の点\(\large{P_1}\), 点\(\large{P_2}\) より交点の\(\large{y}\)座標の値が大きくなる単位円の範囲、すなわち 図中の赤線の範囲が、求める不等式の解の範囲となります。
ここで、\(\large{\tan \theta}\) は \(\displaystyle \large{\theta = \frac{\pi}{2},\hspace{2pt}\frac{3}{2}\pi}\) で値が定義されないことに注意が必要です。
上図から、求める解\(\large{\theta}\)は、
$$\displaystyle \large{\frac{\pi}{3} \leqq \theta < \frac{\pi}{2},\hspace{3pt}\frac{4}{3}\pi \leqq \theta < \frac{3}{2}\pi}$$
となります。
以下の三角関数を含む不等式の応用問題について解説します。
上記の問題(4),(5)は、三角関数の変数に定数が存在しています。このような問題では、\(\displaystyle\large{\theta -\frac{\pi}{4} = t}\) などと別の変数に置き換えて解きます。
上記の問題(6),(7)は、三角関数の二乗が含まれている場合です。このような問題では、\(\large{\sin \theta = x}\) などと置き換え、二次不等式とみなして解きます。
また、問題(8)は、三角関数の合成を利用して解きます。
以下の三角関数を含む不等式について考えます。
【解答と解説】
与えられた不等式の三角関数の変数には、定数項が含まれています。
この場合、\(\displaystyle\large{\theta-\frac{\pi}{4} = t}\) とおいて問題を解きます。
このとき、\(\large{\theta}\) の定義される範囲が \(\large{0 \leqq \theta < 2\pi }\) であることから、 $$\large{-\frac{\pi}{4} \leqq \theta-\frac{\pi}{4} < \frac{7}{4}\pi}$$ $$\large{-\frac{\pi}{4} \leqq t < \frac{7}{4}\pi}$$ が 置き換えた変数 \(\large{t}\) の範囲となります。
ここで、与えられた問題の不等式を \(\large{t}\) で表すと、 $$\large{\sin t \geqq \frac{1}{2}}$$ となります。(問題(1)と同じ不等式です)
この不等式の範囲を単位円上に赤線で示すと、以下の図のようになります。
上図より、不等式を \(\displaystyle \large{-\frac{\pi}{4} \leqq t < \frac{7}{4}\pi }\) の範囲で解くと、 $$\large{\frac{\pi}{6} \leqq t \leqq \frac{5}{6}\pi}$$ となります。
ここで、\(\displaystyle\large{\theta-\frac{\pi}{4} = t}\) であることから、 $$\large{\frac{\pi}{6}+ \frac{\pi}{4}\leqq t+\frac{\pi}{4} \leqq \frac{5}{6}\pi+\frac{\pi}{4}}$$ $$\large{\frac{5}{12}\pi \leqq \theta \leqq \frac{13}{12}\pi}$$ が求める解となります。
以下の三角関数を含む不等式について考えます。
【解答と解説】
与えられた不等式の三角関数の変数には、定数項が含まれているため、\(\displaystyle \large{2\theta-\frac{\pi}{6} = t}\) とおいて問題を解きます。
このとき、\(\large{\theta}\) の定義される範囲が \(\large{0 \leqq \theta < 2\pi }\) であることから、 $$\large{0 \leqq 2\theta < 4\pi}$$ $$\large{-\frac{\pi}{6} \leqq 2\theta-\frac{\pi}{6} < 4\pi-\frac{\pi}{6}}$$ $$\large{-\frac{\pi}{6} \leqq t < \frac{23}{6}\pi}$$ が 置き換えた変数 \(\large{t}\) の範囲となります。
ここで、与えられた問題の不等式を \(\large{t}\) で表すと、
$$\large{\cos t > \frac{\sqrt{3}}{2}}$$
となります。
この不等式の範囲を単位円上に赤線で示すと、以下の図のようになります。
上図より、この不等式を \(\displaystyle \large{-\frac{\pi}{6} \leqq t < \frac{23}{6}\pi }\) の範囲で解くと、 $$\large{-\frac{\pi}{6} < t < \frac{\pi}{6}\pi,\hspace{2pt}\frac{11}{6}\pi < t < \frac{13}{6}\pi}$$ となります。
ここで、\(\displaystyle\large{2\theta-\frac{\pi}{6} = t}\) であることから、\(\displaystyle\large{-\frac{\pi}{6} \leqq t < \frac{\pi}{6}\pi}\) は、 $$\large{-\frac{\pi}{6}+ \frac{\pi}{6} < t+\frac{\pi}{6} < \frac{\pi}{6}+\frac{\pi}{6}}$$ $$\large{0 < 2\theta < \frac{\pi}{3}}$$ $$\large{0 < \theta < \frac{\pi}{6}}$$ また、\(\displaystyle\large{\frac{11}{6}\pi < t < \frac{13}{6}\pi}\) は、 $$\large{\frac{11}{6}\pi+ \frac{\pi}{6} < t+\frac{\pi}{6} < \frac{13}{6}\pi+\frac{\pi}{6}}$$ $$\large{2\pi < 2\theta < \frac{7}{3}\pi}$$ $$\large{\pi < \theta < \frac{7}{6}\pi}$$ となります。
したがって、求める解\(\large{\theta}\) は、 $$\large{0 < \theta < \frac{\pi}{6},\hspace{2pt}\pi < \theta < \frac{7}{6}\pi}$$ となります。
以下の三角関数を含む不等式について考えます。
【解答と解説】
与えられた不等式は、\(\large{\sin}\) と \(\large{\cos}\) が含まれているため、以下の相互関係の式を利用して変換します。
$$\large{\sin^2\theta + \cos^2\theta =1}$$
上式から、問題の不等式を変形すると、
$$\large{2(1-\sin^2\theta) - \sin \theta -1 \leqq 0}$$
$$\large{2\sin^2\theta + \sin \theta -1 \geqq 0}$$
ここで、\(\large{\sin\theta = x}\) と置換します。このとき、\(\large{\theta}\) の範囲が \(\large{0 \leqq \theta < 2\pi }\) であることから、\(\large{x}\) の範囲は \(\large{-1 \leqq \theta \leqq 1 }\) となります。
問題の不等式は、以下のように変形されます。 $$\large{2x^2+ x -1 \geqq 0}$$ $$\large{(x+1)(2x-1) \geqq 0}$$
ここで、二次関数 \(\large{y=(x+1)(2x-1)}\) のグラフを書くと以下のようになります。
上図から、\(\large{x}\) に関する二次不等式を解くと、 $$\large{x=-1,\hspace{2pt}\frac{1}{2} \leqq x \leqq 1}$$ となります。
したがって、\(\large{\sin\theta = x}\) であることから、 $$\large{\sin \theta=-1,\hspace{2pt}\frac{1}{2} \leqq \sin \theta \leqq 1}$$ となります。つまり、\(\large{0 \leqq \theta < 2\pi }\) の範囲で解\(\large{\theta}\) を求めると、 $$\large{\theta=\frac{3}{2}\pi,\hspace{2pt}\frac{\pi}{6} \leqq \theta \leqq \frac{5}{6}\pi}$$ となります。
以下の三角関数を含む不等式について考えます。
【解答と解説】
与えられた不等式は、\(\large{\sin}\) と \(\large{\cos}\) が含まれているため、以下の相互関係の式を利用して変換します。
$$\large{\sin^2\theta + \cos^2\theta =1}$$
上式から、問題の不等式を変形すると、
$$\large{2(1-\cos^2\theta) + 3\cos \theta -3 \geqq 0}$$
$$\large{2\cos^2\theta - 3\cos \theta +1 \leqq 0}$$
ここで、\(\large{\cos\theta = x}\) と置換します。このとき、\(\large{\theta}\) の範囲が \(\large{0 \leqq \theta < 2\pi }\) であることから、\(\large{x}\) の範囲は \(\large{-1 \leqq \theta \leqq 1 }\) となります。
問題の不等式は、以下のように変形されます。 $$\large{2x^2 -3x +1 \leqq 0}$$ $$\large{(x-1)(2x-1) \leqq 0}$$
ここで、二次関数 \(\large{y=(x-1)(2x-1)}\) のグラフを書くと以下のようになります。
上図から、\(\large{x}\) に関する二次不等式を解くと、 $$\large{\frac{1}{2} \leqq x \leqq 1}$$ となります。
したがって、\(\large{\cos\theta = x}\) であることから、 $$\large{\frac{1}{2} \leqq \cos \theta \leqq 1}$$ となります。すなわち、\(\large{0 \leqq \theta < 2\pi }\) の範囲で解\(\large{\theta}\) を求めると、 $$\large{0 \leqq \theta \leqq \frac{\pi}{3},\hspace{4pt}\frac{5}{3}\pi \leqq \theta < 2 \pi}$$ となります。
以下の三角関数を含む不等式について考えます。
【解答と解説】
与えられた不等式は、三角関数の合成により式を変形して解きます。
三角関数の合成は、 $$\large{a \sin \theta + b \cos \theta = r \sin (\theta + \alpha)}$$ に対して、\(\large{r=\sqrt{a^2+b^2}}\)、\(\displaystyle \large{\sin \alpha = \frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}}}\)、\(\displaystyle \large{\cos \alpha = \frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}}}\) を求めることで変形できます。
与えられた不等式に、三角関数の合成を適用すると、 $$\large{\sqrt{3}\sin\theta +\cos \theta = 2\sin(\theta + \alpha)}$$ ここで、\(\large{\displaystyle \sin \alpha = \frac{1}{2}}\)、\(\displaystyle \large{\cos \alpha = \frac{\sqrt{3}}{2}}\) であるため、 $$\large{\sqrt{3}\sin\theta +\cos \theta = 2\sin(\theta + \frac{1}{6}\pi)}$$ となります。
よって、問題の不等式は、 $$\large{2\sin\left(\theta + \frac{1}{6}\pi\right) \geqq 1}$$ $$\large{\sin\left(\theta + \frac{1}{6}\pi\right) \geqq \frac{1}{2}}$$ となります。
\(\displaystyle\large{\theta + \frac{1}{6}\pi = t}\) とおいて不等式を解きます。
\(\large{\theta}\) の範囲が \(\large{0 \leqq \theta < 2\pi }\) であることから、\(\large{t}\) の範囲は \(\displaystyle\large{\frac{\pi}{6} \leqq t < \frac{13}{6}\pi }\) となります。
問題の不等式を 変数\(\large{t}\) により表すと、 $$\large{\sin t \geqq \frac{1}{2}}$$ となります。
この不等式の範囲を単位円上に赤線で示すと、以下の図のようになります。
上図から、\(\displaystyle\large{\frac{\pi}{6} \leqq t < \frac{13}{6}\pi }\) の範囲で解くと、 $$\large{\frac{\pi}{6} \leqq t \leqq \frac{5}{6}\pi}$$ となります。したがって、求める解\(\large{\theta}\)の範囲は、 $$\large{\frac{\pi}{6}-\frac{\pi}{6} \leqq t-\frac{\pi}{6} \leqq \frac{5}{6}\pi-\frac{\pi}{6}}$$ $$\large{0 \leqq \theta \leqq \frac{2}{3}\pi}$$ となります。