本項では、『対数方程式の問題と解き方』 について解説します。
対数方程式とは、『\(\large{\log_2 x = 4}\)』 や 『\(\large{\log_2 x +\log_2 (x-2) =3}\)』 のように対数を含む方程式のことです。
対数方程式を解くときは、以下の解法①~③の方法により解きます。
まず、最も基本的な対数の定義を利用する解き方です。
式が \(\large{p = \log_a M}\) の形である場合に使用します。
例えば、以下の対数方程式を解くとします。 $$\large{\log_2 x = 4}$$ 対数の定義から、以下のように解くことができます。 $$\large{x=2^4 = 16}$$
(対数の定義を利用する問題は、問題(1),(2)で解説しています。)
次に、対数の真数を比較する解き方です。両辺が同じ底の対数である場合は、この解法を使用します。
例えば、以下の対数方程式を解くとします。 $$\large{\log_2 x = \log_2 (-x+1)}$$ 真数を比較して、以下のように解くことができます。 $$\large{x = -x +1}$$ $$\large{x = \frac{1}{2}}$$
(対数の真数を比較する問題は、問題(3),(4)で解説しています。)
次に、対数を置換する解き方です。対数が2乗されている場合など、対数の真数を両辺で比較できない場合に使用します。
例えば、以下の対数方程式を解くとします。 $$\large{(\log_2 x)^2 - 2\log_2 x = 0}$$ \(\large{\log_2 x = X}\) と置換すると、 $$\large{X^2 - 2X = 0}$$ $$\large{X(X-2) = 0}$$ したがって、 $$\large{X=0,2}$$ となります。これを満たす解\(\large{x}\)は、\(\large{\log_2 x = X}\) より \(\large{x=1,4}\) となります。
(対数を置換する問題は、問題(5)で解説しています。)
対数方程式を 全ての実数\(\large{x}\) の範囲で解いた場合、対数が成り立たない解が導かれることがあります。
そのため、対数方程式を解くときは、与えられた対数が真数条件を満たすように あらかじめ\(\large{x}\)の条件を求めておきます。
真数条件とは、対数が \(\large{p = \log_a M}\) で表されるとき、真数\(\large{M}\) が正となるという条件です。
例えば、以下のような対数方程式を解くとします。 $$\large{\log_2 x + \log_2 (x-2) =3}$$ この場合、真数条件は "\(\large{\log_2 x}\)" と "\(\large{\log_2 (x-2)}\)" のそれぞれで成り立つ必要があるため、 『真数条件は \(\large{x>0}\) と \(\large{x-2>0}\) の共通範囲をとった \(\large{\color{blue}{x > 2}}\) 』 となります。
ここで、真数条件は対数を変形する前に求めるという点に注意が必要です。
例えば、上式を変形すると、
\begin{eqnarray}
\large
\log_2 x + \log_2 (x-2) &\large =&\large 3 \\[0.7em]
\large
\log_2 x(x-2)&\large =&\large 3\\
\end{eqnarray}
となりますが、\(\large{x(x-2)>0 }\) を満たす \(\large{x}\) の範囲は \(\large{x < 0,x > 2}\) となるため、真数条件が変化してしまいます。
\(\large{x < 0,x > 2}\) では、与えられた式に適さない \(\large{x}\) の範囲 (\(\large{x < 0}\)) を条件に入れてしまうため、対数を変形する前に真数条件を決定しておく必要があります。
本章では、以下の(1)~(5)の対数方程式の問題について解説します。
まず、対数方程式を解くときは、真数条件を確認します。
対数の真数は正であることから、\(\large{x > -2}\) が成り立ちます。
解法①:対数の定義の利用から、 $$\large{x+2 = 3^2 = 9}$$ よって、 $$\large{x=7}$$ と求められます。この解は真数条件を満たします。
まず、真数条件を確認します。
対数の真数は正であることから、\(\large{x > 0}\) かつ \(\large{x-2 > 0}\) が成り立ちます。
2つの不等式の共通範囲をとると、解の存在する範囲は、
$$\large{x > 2}$$
となります。
次に、対数の公式 $$\large{\log_a{MN} = \log_a M+ \log_a N}$$ を利用し与えられた式を整理します。
\begin{eqnarray} \large \log_2 x +\log_2 (x-2)&\large =&\large 3 \\[0.7em] \large \log_2 x(x-2)&\large =&\large 3\\ \end{eqnarray}
ここで、解法①:対数の定義の利用から、 $$\large{2^3 = x(x-2)}$$ $$\large{x^2 -2x -8 = 0}$$ $$\large{(x+2)(x-4)=0}$$ 上記の方程式の解は、\(\large{x=-2,4}\) ですが、真数条件から解の存在する範囲が \(\large{x > 2}\) であるため、求める解は $$\large{x=4}$$ となります。
途中式の $$\large{\log_2 x(x-2) = 3}$$ は右辺を底が 2 の対数に変形することで 解法②:真数の比較により解くこともできます。
(右辺)\(\large{=\log_2 2^3}\) であることから、 $$\large{\log_2 x(x-2) = \log_2 2^3}$$ 真数を比較すると、 $$\large{x(x-2)=2^3}$$ と同じ式が導かれます。
まず、真数条件を確認します。
対数の真数は正であることから、\(\large{x + 6 > 0}\) かつ \(\large{x > 0}\) が成り立ちます。
2つの不等式の共通範囲をとると、解の存在する範囲は、
$$\large{x > 0}$$
となります。
次に、対数の公式 $$\large{\log_a M^b = b \log_a M}$$ を利用し式を整理すると、 \begin{eqnarray} \large \log_3 (x+6)&\large =&\large 2 \log_3 x\\[0.7em] \large \log_3 (x+6)&\large =&\large \log_3 x^2\\ \end{eqnarray}
ここで、解法②:真数の比較から、 $$\large{x+6 = x^2}$$ が成り立ちます。上式を解くと、 $$\large{x^2 -x -6 = 0}$$ $$\large{(x+2)(x-3)= 0}$$ 上記の方程式の解は、\(\large{x=-2,3}\) ですが、真数条件から解の存在する範囲が \(\large{x > 0}\) であるため、解は $$\large{x=3}$$ となります。
まず、真数条件を確認します。
対数の真数は正であることから、\(\large{x > 0}\) かつ \(\large{2x +3 > 0}\) が成り立ちます。
2つの不等式の共通範囲をとると、解の存在する範囲は、
$$\large{x > 0}$$
となります。
次に、与えられた対数方程式は、底の値がそろっていないため、底の変換公式から底の値をそろえます。
底の変換公式 \(\displaystyle \large {\log_a b = \frac{\log_c b}{\log_c a}}\) から \begin{eqnarray} \large \log_3 x&\large =&\large \frac{\log_3 (2x+3)}{\log_3 9}\\[0.7em] \large &\large =&\large \frac{\log_3 (2x+3)}{\log_3 3^2}\\[0.7em] \large &\large =&\large \frac{\log_3 (2x+3)}{2}\\[0.7em] \end{eqnarray} 両辺に 2 をかけて、 \begin{eqnarray} \large 2 \log_3 x&\large =&\large \log_3 (2x+3)\\[0.7em] \large \log_3 x^2&\large =&\large \log_3 (2x+3)\\ \end{eqnarray} 解法②:真数の比較から、以下の式となります。 $$\large{x^2 = 2x+3}$$ $$\large{x^2 -2x-3=0}$$ $$\large{(x+1)(x-3)=0}$$ したがって、解は \(\large{x=-1,3}\) となりますが、真数条件から\(\large{x}\) の範囲は \(\large{x >0}\) であるため、\(\large{x=3}\) が求める解となります。
与えられた対数方程式は、底に変数 \(\large{x}\) を持つ対数が含まれています。
底に変数が含まれている場合は、真数条件に加えて、底の条件も考慮する必要があります。
\(\large{\log_2 x}\) の真数条件から \(\large{x>0}\) となります。
また、\(\large{\log_x 2}\) の底の条件から、\(\large{x>0,x\neq 1}\) となります。
共通範囲をとると、求める\(\large{x}\)の範囲は、\(\large{x>0,x\neq 1}\) となります。
次に、与えられた対数方程式は、底の値がそろっていないため、底の変換公式から底の値をそろえます。
底の変換公式 \(\displaystyle \large {\log_a b = \frac{1}{\log_b a}}\) から \begin{eqnarray} \large \log_2 x + 8\log_x 2&\large =&\large 6\\[0.7em] \large \log_2 x + 8\frac{1}{\log_2 x}&\large =&\large 6\\ \end{eqnarray}
ここで、\(\large{x \neq 1}\) であることから、\(\large{\log_2 x \neq 0}\)より 両辺に \(\large{\log_2 x}\) をかけると、 $$\large{(\log_2 x)^2 + 8 = 6\log_2 x}$$ $$\large{(\log_2 x)^2 -6\log_2 x + 8 = 0}$$ ここで、解法③:対数の置換から、\(\large{\log_2 x = X}\) とおくと、以下の式となります。 $$\large{X^2 -6X +8 = 0}$$ $$\large{(X-2)(X-4) = 0}$$ 上式の解は、\(\large{X = 2,4}\) となります。
\(\large{\log_2 x = X}\) から \(\large{x}\) を求めると、\(\large{x=4,16}\) となります。ここで、\(\large{x=4,16}\) は、真数条件と底の条件 (\(\large{x>0,x\neq 1}\)) を満たすため、どちらも解となります。
したがって、求める解は、\(\large{x=4,16}\) となります。