本項では以下の内容を解説しています。
調和数列とは、数列 \(\large{\{a_n\}}\) において、その逆数の数列 \(\displaystyle\large{\left\{\frac{1}{a_n}\right\}}\) が等差数列となる数列のことをいいます。
例えば、以下のような数列 \(\large{\{a_n\}}\) について考えます。
$$\large{\frac{1}{2}\hspace{1pt},\hspace{4pt}\frac{1}{5}\hspace{1pt},\hspace{4pt}\frac{1}{8}\hspace{1pt},\hspace{4pt}\frac{1}{11}\hspace{1pt},\hspace{4pt}\frac{1}{14}\hspace{1pt},\cdots}$$
この数列の各項の逆数 \(\displaystyle\large{\left\{\frac{1}{a_n}\right\}}\) は、以下のようになります。
$$\large{2\hspace{1pt},\hspace{4pt}5\hspace{1pt},\hspace{4pt}8\hspace{1pt},\hspace{4pt}11\hspace{1pt},\hspace{4pt}14\hspace{1pt},\cdots}$$
この数列は、初項 \(\large{2}\), 公差 \(\large{3}\) の等差数列であることがわかります。
したがって、もとの数列 \(\large{\{a_n\}}\) は調和数列となります。
【例題(1)の解答】
例題(1)の数列の各項の逆数をとると
$$\large{2\hspace{1pt},\hspace{4pt}4\hspace{1pt},\hspace{4pt}6\hspace{1pt},\hspace{4pt}8\hspace{1pt},\cdots}$$
となり、この数列は隣り合う項との差が
$$\large{a_n - a_{n-1} = 2}$$
であることから、公差 \(\large{2}\) の等差数列であることがわかります。
したがって、(1)の数列は調和数列となります。
【例題(2)の解答】
例題(2)の数列の各項の逆数をとると
$$\large{\frac{1}{6}\hspace{1pt},\hspace{4pt}\frac{1}{3}\hspace{1pt},\hspace{4pt}\frac{1}{2}\hspace{1pt},\hspace{4pt}\frac{2}{3}\hspace{1pt},\cdots}$$
となり、この数列は隣り合う項との差が
$$\large{a_n - a_{n-1} = \frac{1}{6}}$$
であることから、公差 \(\displaystyle\large{\frac{1}{6}}\) の等差数列であることがわかります。
したがって、(2)の数列は調和数列となります。
調和数列の一般項の求め方について解説します。
以下の数列 \(\large{\{a_n\}}\) が調和数列であるとします。 $$\large{a_1\hspace{1pt},\hspace{5pt}a_2\hspace{1pt},\hspace{5pt}a_3\hspace{1pt},\cdots,a_n}$$ 調和数列の性質から 各項の逆数をとった $$\large{\frac{1}{a_1}\hspace{1pt},\hspace{5pt}\frac{1}{a_2}\hspace{1pt},\hspace{5pt}\frac{1}{a_3}\hspace{1pt},\cdots,\frac{1}{a_n}}$$ が等差数列となります。
したがって、上記の等差数列の一般項 \(\displaystyle\large{\frac{1}{a_n}}\) は、初項を \(\displaystyle\large{p = \frac{1}{a_1}}\)、公差を \(\displaystyle\large{q = \frac{1}{a_n}-\frac{1}{a_{n-1}}}\) とすると $$\large{\frac{1}{a_n} = p + (n-1)q}$$ となります。
この逆数をとったものが調和数列 \(\large{\{a_n\}}\) の一般項となります。
上記の公式を言い換えると、以下のようにも表せます。
例題の数列の各項の逆数をとると $$\large{5\hspace{1pt},\hspace{4pt}9\hspace{1pt},\hspace{4pt}13\hspace{1pt},\hspace{4pt}17\hspace{1pt},\hspace{4pt}21,\cdots}$$ となります。
この逆数をとった数列は、初項 \(\large{a=5}\), 公差 \(\large{d=4}\) の等差数列であるため、一般項は \begin{eqnarray} \large \frac{1}{a_n} &\large =&\large a + (n-1)d\\[0.7em] \large &\large =&\large 5+(n-1)\cdot 4 \\[0.7em] \large &\large =&\large 4n+1 \\[0.7em] \end{eqnarray} と求められます。
したがって、この逆数が調和数列の一般項となるため、求める一般項は $$\large{a_n = \frac{1}{4n+1}}$$ と求められます。
本章では、調和数列に関する問題と解き方について解説します。
【問題1の解答】
問題の数列が調和数列となるとき、各項の逆数をとった数列
$$\large{9\hspace{1pt},\hspace{3pt}\frac{1}{x}\hspace{1pt},\hspace{3pt} 1\hspace{1pt},\hspace{3pt} \frac{1}{y},\cdots}$$
が等差数列となります。したがって、隣り合う項との差分が等しくなるため、
$$\large{\frac{1}{x} -9 = 1-\frac{1}{x}}$$
が成り立つことから
$$\large{x=\frac{1}{5}}$$
となります。
\(\large{y}\) についても同様に $$\large{\frac{1}{y} -1 = 1-5}$$ が成り立つことから $$\large{y=-\frac{1}{3}}$$ となります。
したがって、求める\(\large{\hspace{1pt} x,\hspace{1pt}y}\) は、 $$\large{x=\frac{1}{5}\hspace{1pt},\hspace{5pt}y=-\frac{1}{3}}$$ となります。
【問題2の解答】
問題の数列の各項の逆数をとると
$$\large{\frac{1}{3}\hspace{1pt},\hspace{3pt}\frac{1}{12}\hspace{1pt},\hspace{3pt} -\frac{1}{6}\hspace{1pt},\hspace{3pt} -\frac{5}{12},\cdots}$$
この数列の隣り合う項との差分を求めると、
\begin{eqnarray}
\large
\frac{1}{12}-\frac{1}{3} &\large =&\large -\frac{1}{4}\\[0.7em]
\large -\frac{1}{6}-\frac{1}{12} &\large =&\large -\frac{1}{4}\\[0.7em]
\large -\frac{5}{12}-\left(-\frac{1}{6}\right) &\large =&\large -\frac{1}{4}\\[0.7em]
\end{eqnarray}
したがって、数列の逆数は公差 \(\displaystyle\large{d=-\frac{1}{4}}\) の等差数列となることがわかります。
初項 \(\displaystyle\large{a=\frac{1}{3}}\), 公差 \(\displaystyle\large{d=-\frac{1}{4}}\) の一般項は \begin{eqnarray} \large \frac{1}{a_n} &\large =&\large a + (n-1)d\\[0.7em] \large &\large =&\large \frac{1}{3}+(n-1)\cdot \left(-\frac{1}{4}\right) \\[0.7em] \large &\large =&\large -\frac{1}{4}n +\frac{7}{12} \\[0.7em] \end{eqnarray} と求められます。
したがって、この逆数が問題の数列の一般項となるため、求める一般項は \begin{eqnarray} \large a_n &\large =&\large \frac{1}{-\frac{1}{4}n +\frac{7}{12}} \\[0.7em] \large &\large =&\large \frac{12}{-3n +7} \\[0.7em] \end{eqnarray} と求められます。
【問題3の解答】
調和数列の逆数の数列の初項を \(\large{a}\)、公差を \(\large{d}\) とすると、一般項は
$$\large{a_n = \frac{1}{a + (n-1)d}}$$
となります。
与えられた条件から、以下の2式が成り立ちます。 \begin{eqnarray} \large 2 &\large =&\large \frac{1}{a + 3 \hspace{1pt} d}\\[0.7em] \large 5 &\large =&\large \frac{1}{a + 6 \hspace{1pt} d} \\[0.7em] \end{eqnarray} となります。
ここで、2式を解くと $$\large{d=-\frac{1}{10}\hspace{1pt},\hspace{3pt}a=\frac{4}{5}}$$ となります。したがって、数列の一般項は \begin{eqnarray} \large a_n &\large =&\large \frac{1}{\frac{4}{5} -\frac{1}{10}\cdot(n-1)}\\[0.7em] \large &\large =&\large \frac{10}{9-n}\\[0.7em] \end{eqnarray} となります。