本項では以下の内容を解説しています。
微分方程式とは、未知の関数の導関数を使用した関係式のことをいいます。
微分方程式は英語でdifferential equationといいます。
例えば、従属変数\(\large{y}\)、独立変数\(\large{x}\)の関数\(\large{y=f(x)}\)の導関数\(\large{\frac{dy}{dx}}\)を使用した以下のような式を微分方程式といいます。 $$\large{\displaystyle \frac{dy}{dx}=-y\hspace{20pt}(1)}$$
微分方程式には、導関数の記法として\(\large{\frac{dy}{dx}}\)、\(\large{f'(x)}\)、\(\large{\dot{y}}\)などが使用されます。 本項では、ライプニッツの形式\(\large{\frac{dy}{dx}}\)を使用して解説します。
導関数の記法ごとの英語表現については、微分の英語表現に説明しています。
(1)式のような1階の導関数を含む微分方程式を、1階微分方程式といいます。
英語で微分方程式の階数を表現する場合は、『(序数) + order』により表します。
例えば、英語で1階微分方程式を表す場合は『first-order』を使用して"first-order differential equation"といいます。
また、n階の微分方程式は、"nth-order differential equation"といいます。
用語 | 英語 | 数式の例 |
---|---|---|
1階微分 方程式 |
first-order differential equation | \(\large{ \displaystyle \frac{dy}{dx}=-y}\) |
2階微分 方程式 |
second-order differential equation | \(\large{ \displaystyle \frac{d^2y}{dx^2}+\frac{dy}{dx}=0}\) |
: | : | : |
n階微分 方程式 |
nth-order differential equation | \(\large{ \displaystyle \frac{d^ny}{dx^n}+2y=0 }\) |
上記の1階微分方程式『\(\large{ \displaystyle \frac{dy}{dx}=-y}\)』を英語で読むと、"dy dx is equal to minus y"といいます。
もしくは、『yのxに関する微分』を意味する"derivative of y with respect to x"を使用して、 "the derivative of y with respect to x is equal to minus y"ともいいます。
また、上記の2階微分方程式『\(\large{ \displaystyle \frac{d^2y}{dx^2}+\frac{dy}{dx}=0}\)』を英語で読むと、"d two y dx two plus dy dx is equal to 0"といいます。
(導関数\(\large{\frac{dy}{dx}}\)や\(\large{\frac{d^2y}{dx^2}}\)の英語の読み方にはいくつかパターンがあり、微分の英語表現で説明しています。)
また、最も階数の高い導関数の次数を、微分方程式の次数といいます。
例えば、以下のような2階微分方程式の場合、最も高い階数の\(\large{\frac{d^2y}{dx^2}}\)の次数が1であるため、1次の微分方程式です。
$$\large{ \displaystyle \frac{d^2y}{dx^2}+\left(\frac{dy}{dx}\right)^2=0}$$
微分方程式の次数は英語で『(序数) + degree』により表します。例えば、1次微分方程式の場合、"first-degree differential equation"といいます。
用語 | 英語 | 数式の例 |
---|---|---|
1次微分 方程式 |
first-degree differential equation | \(\large{ \displaystyle \frac{d^2y}{dx^2}+\left(\frac{dy}{dx}\right)^2=0}\) |
2次微分 方程式 |
second-degree differential equation | \(\large{ \displaystyle \left(\frac{d^2y}{dx^2}\right)^2+\frac{dy}{dx}=0}\) |
: | : | : |
n次微分 方程式 |
nth-degree differential equation | \(\large{ \displaystyle \left(\frac{dy}{dx}\right)^n+2y=0 }\) |
上記の2次微分方程式『\(\large{ \displaystyle \left(\frac{d^2y}{dx^2}\right)^2+\frac{dy}{dx}=0}\)』を英語で読むと、
"d two y dx two squared plus dy dx is equal to 0"といいます。
(『X squared 』はXの2乗を表す用語です。詳しくは、べき乗の英語表現の記事に記載しています。)
解の従属変数が\(\large{y}\)であるとき、微分方程式に\(\large{y}\)や\(\large{\frac{dy}{dx}}\)など、従属変数を含む項が1次のみである場合を線形微分方程式といいます。
線形微分方程式を英語では、"linear differential equation"といいます。
一方、微分方程式に\(\large{y^2}\)や\(\large{\left(\frac{dy}{dx}\right)^2}\)、\(\large{\sin y}\)など1次でない従属変数の項が含まれている場合を非線形微分方程式といいます。
非線形微分方程式を英語では、"non-linear differential equation"といいます。
用語 | 英語 | 数式の例 |
---|---|---|
線形 微分方程式 |
linear differential equation | \(\large{ \displaystyle \frac{dy}{dx}+y=0}\) \(\large{ \displaystyle \frac{d^2y}{dx^2}+5x=0}\) |
非線形 微分方程式 |
non-linear differential equation | \(\large{ \displaystyle \frac{dy}{dx}+y^2=0 }\) \(\large{ \displaystyle {\left(\frac{dy}{dx}\right)}^2+x=0 }\) \(\large{ \displaystyle \frac{dy}{dx} - \sin y =0 }\) |
非線形微分方程式『\(\large{ \displaystyle {\left(\frac{dy}{dx}\right)}^2+5x=0 }\)』を英語で読むと、
"dy dx squared plus 5 times x is equal to 0"といいます。
また、非線形微分方程式『\(\large{ \displaystyle \frac{dy}{dx} - \sin y=0 }\)』を英語で読むと、
"dy dx minus sine y is equal to 0"といいます。
(三角関数の英語表現については別の記事に記載しています。)
独立変数の数によって、常微分方程式(ordinary differential equation,ODE)と偏微分方程式(partial differential equation,PDE)に分類されます。
常微分方程式は、1つの独立変数のみに依存する微分方程式のことをいいます。
一方、偏微分方程式は2つ以上の独立変数に依存する微分方程式のことを意味します。
用語 | 英語 | 数式の例 |
---|---|---|
常微分方程式 | ordinary differential equation | \(\large{ \displaystyle \frac{dy}{dx}+5x+10=0}\) |
偏微分方程式 | partial differential equation | \(\large{ \displaystyle \frac{\partial^2u}{\partial x^2} = \frac{1}{c^2}\frac{\partial^2u}{\partial t^2} }\) |
偏微分\(\large{\frac{\partial u}{\partial x}}\)を英語で表すと、『yのxに関する偏微分』を意味する
"the (first) partial derivative of u with respect to x"といいます。
また、\(\large{\frac{\partial u}{\partial x}}\)の記号を英語で読み、"del u (over) del x"と言う場合もあります。
overは分数を表すときに使用されますが、微分記号を言い表すときは省略されることが多いです。 (分数の英語表現は別ページに解説しています。)
偏微分方程式『\(\large{ \displaystyle {\frac{\partial^2u}{\partial x^2} = \frac{1}{c^2}\frac{\partial^2u}{\partial t^2}}}\)』を英語で読むと、
"the second partial derivative of u with respect to x, is equal to 1 divided by c squared times, the second partial derivative of u with respect to t"といいます。
偏微分の英語表現と読み方については、別の記事で解説しています。
また、その他の分類として、従属変数\(\large{y}\)とその導関数\(\large{\frac{dy}{dx},\frac{d^2y}{dx^2},\cdots}\)のみで書き表される微分方程式を斉次微分方程式といいます。
一階の斉次微分方程式は以下の形式となります。 $$\large{\frac{dy}{dx} + p(x)y= 0}$$ 斉次微分方程式を英語でhomogeneous differential equationといいます。
また、従属変数\(\large{y}\)とその導関数\(\large{\frac{dy}{dx},\frac{d^2y}{dx^2},\cdots}\)を含まない項が存在する場合を、非斉次微分方程式といいます。
一階の非斉次微分方程式は以下の形式となります。 $$\large{\frac{dy}{dx} + p(x)y= q(x)}$$ 非斉次微分方程式を英語でinhomogeneous differential equationといいます。
微分方程式の解は、任意の定数を含んだ解として与えられます。
例えば、以下のような1階線形微分方程式
$$\large{\frac{dy}{dx}= -y}$$
の解は任意の定数\(\large{C}\)を含んだ解として与えられます。
$$\large{y= C e^{-x}}$$
上式のように、任意の定数\(\large{C}\)を含んだ解を一般解といいます。一般解は英語でgeneral solutionといいます。
また、任意の定数\(\large{C}\)を英語で"arbitrary constant"もしくは、"unknown constant"といいます。
\(\large{x=0}\)のとき\(\large{y(0)=1}\)といった条件を与えることで、定数\(\large{C}\)に具体的な数値を入れることができます。
例えば、上式の一般解\(\large{\large{y= C e^{-x}}}\)に\(\large{y(0)=1}\)という条件を与えると、\(\large{C=1}\)となり、以下のように解の具体的な式が決定されます。
$$\large{y= e^{-x}}$$
このように、定数\(\large{C}\)の具体的な数値を決定した解を特解といい、英語では"particular solutionといいます。
微分方程式の解の条件を初期条件といい、英語では"initial conditionといいます。
また、初期値が与えられる問題を、初期値問題といいます。初期値問題は英語で"initial value problemsといます。
本項で解説した微分方程式の種類に関連する英語表現の用語の一覧を示します。
用語 | 意味 |
---|---|
differential equation | ・微分方程式 |
linear differential equation | ・線形微分方程式 |
non-linear differential equation | ・非線形微分方程式 |
ordinary differential equation | ・常微分方程式 |
partial differential equation | ・偏微分方程式 |
homogeneous differential equation | ・斉次微分方程式 |
inhomogeneous differential equation | ・非斉次微分方程式 |
partial derivative of y with respect to x |
・yのxに関する偏微分 |
微分方程式の解に関する用語の一覧を示します。
用語 | 意味 |
---|---|
general solution | ・一般解 |
arbitrary constant unknown constant |
・任意の定数 |
particular solution | ・特解 |
initial condition | ・初期状態 |
initial value problems | ・初期値問題 |
その他、本項で解説した内容以外の、微分方程式によく使用される英語表現の用語の一覧を示します。
用語 | 意味 |
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separation of variables | ・変数分離法 |
family of curves | ・曲線群 |
boundary conditions | ・境界条件 |
integrating factor | ・積分因子 |
equilibrium point | ・平衡点 |
Laplace's equation | ・ラプラス方程式 |
Helmholtz equation | ・ヘルムホルツ方程式 |
Poisson's equation | ・ポアソン方程式 |
wave equation | ・波動方程式 |