本項では以下の内容を解説しています。
本章では、凸レンズの働きや実像や虚像、凸レンズの身近な使用例などについて解説します。
凸レンズは、外側に凸面を向けた形状をしており、入射した光を一点に集める作用を持ちます。
凸レンズは、離れた位置にある物体(光源)からの光を集め、反対側の位置に像を作り出す働きがあります。このような物体からの光を集め、像を作ることを結像といいます。
図1に、凸レンズの前に置かれた物体からの光を集め、像を作る様子を示します。
凸レンズによって光が集められて作られる像を実像といいます。
図1のように、物体の先端から出た光は、凸レンズにより実像の先端の位置に集光します。
また、物体の中間から出た光は、凸レンズにより実像の中間の位置に集光します。
光は凸レンズによって軸に対称的な位置に集光され、実像は物体に対して上下左右逆に作り出されます。 そのため、実像の作られる位置にスクリーンを置くと、上下左右逆の像が映し出されます。
凸レンズの身近な例として、人が眼で物を見るときは、眼の水晶体が凸レンズとして光を集光し、網膜上に実像を作り出します。
また、カメラレンズも凸レンズの光を集める作用を使用しています。(実際には、様々な形状のレンズを組み合わせて、カメラレンズ全体として凸レンズの働きをさせて、実像を作り出しています。)
物体が凸レンズの焦点の位置よりも近くなると、凸レンズは光を集めることができず、光は拡散されます。このとき、物体からの光を逆方向に延長すると、それぞれの光の延長線が一点に集まります。
この延長線が交わる位置に作られる像を虚像といいます。
図2に凸レンズによって虚像が作られる様子を示します。
実像と虚像の違いは、実像は物体からの光が集まって作られる像であるのに対して、虚像は実際には光が集まっていない像という点にあります。
例えば、実像の位置にスクリーンを置くと物体の像が映し出されます。一方、虚像の位置にスクリーンを置いても、光が実際には集まっていないため、何も像は映し出されません。
一方、虚像は光が拡散された方向から人の眼で観察することで、その像を見ることができます。これは人の眼によって拡散された光を集光し、網膜上に実像を映し出すためです。
凸レンズの虚像の身近な例として、虫眼鏡(ルーペ)があります。
凸レンズの近い位置に物体を置くと、拡大された虚像が作られます。その虚像を見ることで、拡大された物体の像を観察することができます。
凹レンズは、外側に凹面を向けた形状をしており、入射した光を拡散させる働きを持ちます。
凸レンズと凹レンズの違いは、凸レンズは物体からの光を集めて実像を作りますが、凹レンズには光を集める作用がないため、物体の位置に関わらず実像を作ることがないという点があります。
図4に凹レンズの前に物体を置いたときの光を経路を示します。
図4のように、凹レンズの前に物体を置いたとき、凹レンズによって光は拡散されます。
拡散された光線を逆方向に延長すると、延長線が一点に交わります。この延長線の交わる点に、凹レンズの虚像が作られます。
凹レンズによる虚像は、物体の位置に関わらず、正立して縮小した像になります。
凹レンズの身近な使用例として、近視の矯正用のメガネとして使用されます。
近視とは、遠くの物体を見たときに、網膜の手前で光を集めてしまう状態のことをいいます。
凹レンズの光を広げる作用により、網膜上に光を集められるように補正することで、遠くの物体も良く見えるようにすることができます。
本章では、凸レンズと凹レンズの作図の方法について解説します。
物体からは本来あらゆる方向に光が出ていますが、凸レンズや凹レンズの結像の様子を作図するときは、代表的な3本の光線を描くことで作図を行います。
また、作図には必ずしも3本の光線を引く必要はなく、2本の光線を引くことができれば、その交点から像を作図することができます。
凸レンズでは以下の方法にしたがって光線を描きます。
図5のように焦点\(\large{F}\)の外側に物体があるとき、以下のように作図されます。
焦点\(\large{F}\)の外側に物体がある場合、倒立した実像が作られます。
また、図6のように焦点\(\large{F}\)の内側に物体があるとき、以下のように作図されます。
焦点\(\large{F}\)の内側に物体がある場合、正立した虚像が作られます。
凸レンズの作図を行うときのコツは、先に分かりやすい『(1)物体から出る平行光』と『(2)レンズの中心を通る光』から作図を始めることです。
『(3)焦点\(\large{F}\)を通る光線』は、像が実像か虚像かで引き方が変わるため、後から作図をすると分かりやすく作図ができます。
以下に、凸レンズに対して物体の位置が『焦点の外側』、『焦点の位置』、『焦点の内側』の3点で作図をした結果を示します。
物体の位置が焦点の外側のときは実像、焦点の内側のときは虚像が作られます。
また、物体の位置が焦点の位置に一致するときは、作図によって像は描かれません。
物体の位置に対する像の大きさ(倍率)については横倍率のページで詳しく説明しています。
凹レンズでは以下の方法にしたがって光線を描きます。
図8に示すように凹レンズの前に物体がある場合は、正立して縮小した虚像が作られます。
以下の図9に、凹レンズに対して物体の位置が『焦点の外側』、『焦点の位置』、『焦点の内側』の3点で作図をした結果を示します。
凹レンズでは、物体位置が焦点の外側か内側かに関わらず、虚像が作られます。
本項の内容に関連した問題を解説します。
【問題】
下図のように、凸レンズにより物体の実像が作られている。このとき、凸レンズと焦点\(\large{F}\)の間に、レンズの上半分を隠すように遮蔽板を置いたとき、実像はどのように変化するか?
【回答と解説】
下図に凸レンズと焦点\(\large{F}\)の間に遮蔽板を置いた様子を示します。
凸レンズの上半分を遮蔽板で隠すと、光線の一部が遮られますが、遮られなかった光線によって、同じ大きさの実像が作られます。
しかし、本来到達するはずだった光の一部が遮られてしまっているため、実像は暗くなることになります。