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光の波長とは

本項では、以下の内容について解説しています。

  • ・光の波長の意味と単位
  • ・電磁波の波長と身近な応用例
  • ・周波数の求め方

【1】光の波長とは

本章では、光の波長の意味や単位などについて解説します。

【1-1】波長とは

波長(英 : wavelength)とは、波が空間を伝わるときの1周期分の長さを意味します。

図1のように、山と谷が繰り返す形であれば、隣り合う山と山の間隔が波長となります。
また、隣り合う谷と谷の間隔でも同様に波長の大きさとなります。 波の波長と振幅の説明図

図1.伝搬する波のイメージ

波長の記号は、ギリシャ文字である\(\large{\lambda}\)(ラムダ)が使用されます。

また、波の山や谷の大きさは振幅により表され、記号はAがよく使用されます。その他、図1のような正弦波の表記方法については、正弦波の式で解説しています。

【1-2】光の波長とは

光は、電場と磁場が互いに垂直に振動し空間を伝わる波として表されます。
図2に、電場がx軸方向、磁場がy軸方向に振動しながら、z軸方向に進行する光のイメージを示しています。 光の電場と磁界の様子を説明する図

図2.電場と磁場が振動するイメージ

光の波長は、振動する電場もしくは磁場の、隣り合う山と山の間隔の長さとなります。

光は波長が変わると、目に見える色、光のエネルギー、障害物の後ろに光が回り込む現象である回折のしやすさなど、物理的な性質が変化します。

例えば、よく知られている太陽光をプリズムに通すと虹色に分けられる実験は、光の波長が短いほど、プリズムの屈折率が大きくなり、プリズムによる屈折の作用が大きくなることから生じます。

【1-3】光の波長の単位

光の波長の単位にはメートル[m]が使用されます。
例えば、人の目に緑色に見える光の波長は530nmです。nm(ナノメートル)は、10-9m(10億分の1m)を表します。

光の波長の長さを表記する単位には、nm(ナノメートル)、μm(マイクロメートル)、Å(オングストローム)がよく使用されます。

単位 名称
μm 10-6m マイクロメートル
nm 10-9m ナノメートル
10-10m オングストローム
表1.波長によく使用される単位

例えば、緑色の光の波長である530nmは、0.53μmや5300Åとも表されます。

【2】電磁波の波長と身近な応用例

人の目に見える380~770nmの波長の光を可視光といいます。この可視光の波長よりもさらに短い波長や、長い波長も存在します。

赤外線は可視光より長い波長であり、赤外線は目に見えません。また、紫外線は可視光より短い波長で、この波長も目に見えません。
人の目に見えない範囲の波長も含めた波を電磁波といい、光は電磁波に含まれます。

電磁波は波長の長い順に、電波、赤外線、可視光、紫外線、X線、γ線という名称により区別されます。
以下の図3に、よく区分される電磁波の波長の範囲とその名称を示します。 電磁波の波長の範囲と名称

図3.電磁波の波長(1)

ここで、電磁波のそれぞれの波長の領域の特徴や身近な応用例について説明します。

電波

電波は、電磁波の中でも波長の長い波です。電磁波は波長が長いほど、地表面に沿って遠くまで情報を送ることができるという性質があり、通信や放送などの分野に活用されています。

身近な応用例として、波長が10cm~1mの範囲の電磁波を極超短波(UHF)といい、地上デジタル放送や携帯電話のモバイル通信にも使用されています。(2)

赤外線

赤外線は、波長が770nm~1mmの範囲にある電磁波です。赤外線の中で波長が長い順に、遠赤外線、中赤外線、近赤外線と分けられます。

赤外線は多くの分子でよく吸収され、吸収されたエネルギーにより分子が振動し、その熱エネルギーから物体を加熱させる作用があります。
また、熱のある物体は赤外線を放出しているため、暗闇で動きを感知するセンサーや、赤外線から表面の温度を可視化するサーモグラフィに使用されています。

その他の身近な応用例として、血中の酸素の量を採血せずに、センサーで測定するパルスオキシメーターに使用されています。(3)

可視光線

可視光線は、波長が380nm~770nmの範囲にある電磁波です。人が目で知覚できる波長であり、波長の長い順に赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の色に見えます。

以下の表2に、可視光線の波長と色の関係をまとめた表を示します。

波長
640 - 770 nm
590 - 640 nm
550 - 590 nm
490 - 550 nm
430 - 490 nm
380 - 430 nm
表2.色と光の波長(1)

可視光線は人の目に見えることから、照明機器、ディスプレイ、カメラなど身の回りのあらゆる製品に応用されています。

また、太陽から地球に届く光のエネルギーのうち、約52%が可視光線の波長の光です(4)。そのため、太陽電池では可視光線の光を効率よく吸収できる半導体が材料に使用されています。

紫外線

紫外線は、波長が10nm~380nmの範囲にある電磁波です。紫外線の中で波長が長い380nm~200nmを近紫外線、200nm~10nmを遠赤外線や真空紫外線といいます。

身近な応用例として、紫外線には殺菌効果があることが知られています。特に、250nm~260nmの波長の紫外線で殺菌効果が高いと言われています(5)。このような理由により、紫外線は消毒・滅菌用のランプに使用されています。

X線

X線は、波長が約1pm~10nmの範囲にある電磁波です。X線は可視光で不透明な物質でも、よく透過する性質を持ちます。
この性質から、X線はレントゲンやCTなど診断に使用されたり、構造物の内部の検査(非破壊検査)などに使用されています。

γ線

γ線は、波長が約10pmより小さい範囲の電磁波です。X線とγ線の波長の範囲が重なっている理由は、波長の範囲ではなく、電磁波の起源により分けられているためです。
X線は電子の状態の遷移が起源の電磁波であり、γ線は原子核の状態の遷移が起源の電磁波です。

γ線は、電磁波の中でも高いエネルギーを持つことから、脳腫瘍の治療などに用いられるガンマナイフ治療に使用されています。

波長の領域による応用例のまとめ

以下の表に、上記の電磁波の応用例をまとめた一覧を示します。

名称 応用例
電波  通信・放送
赤外線  赤外線センサー、ヒーターなどの熱源
可視光  照明、可視光通信
紫外線  殺菌消毒・ブラックライト
X線  レントゲン・CT・非破壊検査
γ線  ガンマナイフ・非破壊検査
表3.波長領域ごとの応用例

【3】光の波長と周波数

本章では、光の波長と周波数の関係式と求め方について解説します。

【3-1】波長と周波数の関係式

周波数とは、空間を進行する波が1秒間に振動する回数のことをいいます。

周波数の単位は、[Hz](ヘルツ)を使用します。周波数は1秒間あたりの振動回数であるため、次元は[s-1]となります。
図4に示すように、1秒間に1周期分の波が振動する場合、周波数は1Hzとなります。また、図4下のように、1秒間に3周期分の波が振動する場合は、周波数は3Hzとなります。 光の波長と周波数の説明

図4.周波数の説明

波の基本的な式として、波長\(\large{\lambda}\)、速度\(\large{v}\)、周波数\(\large{f}\)の関係を表す式が知られています。

【波長\(\large{\lambda}\)、速度\(\large{v}\)、周波数\(\large{f}\)の関係式】
$$\large{ \displaystyle v=f \lambda \hspace{20pt}(1)}$$

【3-2】光の周波数の求め方

光の周波数は、(1)式の速度に光速\(\large{c}\)(=2.99792458×108[m/s])を使用することにより求められます。

例えば、赤色の光の波長である680nm(=680×10-9[m])の周波数は、4.41×1014[Hz]となります。
可視光の周波数は、1012[Hz]を意味する[THz]を使用することが一般的です。4.41×1014[Hz]の赤色の光の周波数は、441[THz]と表すことができます。

以下に可視光の波長と周波数の関係を一覧で示します。

波長 周波数
640 - 770 nm 389 - 468 THz
590 - 640 nm 468 - 508 THz
550 - 590 nm 508 - 545 THz
490 - 550 nm 545 - 612 THz
430 - 490 nm 612 - 697 THz
380 - 430 nm 697 - 789 THz
表3.可視光の波長と周波数の一覧(1)

別のページに、上記の計算を簡単に行う波長と周波数を変換するツールを作成しています。

計算例

波長680nmの赤色の光の振動数\(\large{f}\)を求めます。
ここで、真空中の光速は\(\large{c=3.00 \times 10^{8}[m/s]}\)として計算します。

(1)式より振動数\(\large{f}\)は以下のように求められます。 \begin{eqnarray} \large \displaystyle f& =& \large\frac{c}{\lambda}\\ \large \displaystyle &=& \frac{3.00 \times 10^{8} [m/s]}{680 \times 10^{-9}[m]}\\ & \approx & 4.41 \times 10^{14}[Hz]\\ &=& 441[THz] \end{eqnarray}

参考文献

・(1)国立天文台『理科年表 平成27年』丸善出版株式会社,平成26年11月30日発行, 物理/化学部 光と電磁波 pp443

・(2)井上伸雄『「電波と光」のことが一冊でまるごとわかる』ベレ出版,平成30年6月25日発行, pp35-38

・(3)"https://www.konicaminolta.jp/healthcare/knowledge/details/principle.html"(コニカミノルタ,パルスオキシメータ知恵袋 基礎編),2023年6月3日閲覧

・(4)佐藤勝昭『「太陽電池」のキホン』ソフトバンク クリエイティブ株式会社,平成23年12月1日発行,第1章 太陽光と太陽電池(入門編) pp18

・(5)社団法人 照明学会『大学課程 照明工学(新版)』株式会社オーム社, 平成17年3月31日 第1版第8刷 発行,7章 光放射の視覚以外への応用 pp149~150


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