本項では、以下の内容について解説します。
光のエネルギーを表す単位には、使用用途に合わせて『放射量のワット[W]』と『測光量のルーメン[lm]』の2つの種類が存在します。
物理的な光のエネルギーは、放射量という量により表現されます。 放射量の単位には、単位時間あたりのエネルギーを表す[W]=[J/s]を使用します。
放射量(ワット[W])は、レーザーや太陽電池など、光の物理的なエネルギーを対象とする分野で使用されます。
放射量は人の感じる明るさには関係なく、赤外線や紫外線など人の眼に見えない波長を持つ光のエネルギーも含まれます。
一方、人間が目で見たときに感じる明るさは測光量という量により表現されます。 測光量の単位には、[W]を人の感じる明るさに変換したルーメン[lm]が使用されます。
物理的な光のエネルギーの単位[W]を、人の感じる明るさの単位[lm]に変換する係数として、比視感度という値が使用されます。
測光量は、ディスプレイや照明機器など、人の目で見ることが前提とされる分野において使用されます。
ここで、表1に光のエネルギーの大きさを表す単位の一覧を示します。
表1に示されているように、単位は[W]を使用する放射量と[lm]を使用する測光量に大きく分けらます。
対象とする現象が物理的なエネルギーなのか、人の感じる明るさなのかで、単位の名称や、エネルギーの単位に[W]か[lm]を使用するかが異なってきます。
人の目で感じる光の明るさを評価するためには、物理的な光のエネルギーの波長の分布を、人の目の感度で変換する必要があります。
視感度\(\large{K(\lambda)}\)とは、物理的な光のエネルギーの波長分布を、人の目の感じる明るさに変換する数値のことをいいます。
例えば、太陽光には紫外線や赤外線が含まれますが、人の目は可視光の波長域しか認識できないため、紫外線や赤外線は人の目で感じる明るさには影響しません。
したがって、太陽光が人の目にどの程度の明るさに感じるかを評価するためには、太陽光の波長分布に、人の目の感度(視感度)を掛け合わせて評価を行います。
視感度\(\large{K(\lambda)}\)の値は、国際照明委員会(CIE)により国際規格として定められています。
また、視感度\(\large{K(\lambda)}\)を最大値1で規格化したものを比視感度\(\large{V(\lambda)}\)といいます。 図1に明所での比視感度\(\large{V(\lambda)}\)のグラフを示します。
比視感度は、図1のように555nm(緑色)に頂点をもった曲線となります。
また、先述したように赤外線や紫外線といった可視光域(380~780nm)以外の波長では急激に感度が低下していることが分かります。
本章では、放射量[W]から測光量[lm]への変換に使用される式について解説します。
単位時間あたりの光のエネルギーの波長分布を\(\large{\phi(\lambda)}\)[W]としたとき、人間の目が感じる明るさ\(\large{\phi_v}\)[lm]は以下の式で求められます。 $$\large{\phi_v = \int_0^\infty K(\lambda) \phi(\lambda) d\lambda\hspace{20pt}(1)}$$
ここで、視感度\(\large{K(\lambda)}\)の最大値を\(\large{K_m}\)とすると、比視感度\(\large{V(\lambda)}\)を使い(1)式を書き換えると、以下のようになります。
(2)式により、光の単位時間あたりのエネルギー[W]を、人間の目が感じる明るさ[lm]に変換した値が得られます。
このとき、\(\large{K_m}\)は波長555nmでの視感度を表し、最大視感度と呼ばれます。最大視感度の値は、\(\large{K_m=683}\)[lm/W]となります。