本項では、以下の内容について解説します。
臨界角については別のページに臨界角を計算するツールを作成しています。
全反射(total reflection)とは、屈折率の大きい媒質から小さい媒質に光が進行する場合に、特定の入射角以上で境界面に入射したときに全てのエネルギーが反射される現象のことです。
屈折率\(\large{n_1}\)と屈折率\(\large{n_2}\)の媒質の境界面に光が入射したとき、入射角\(\large{\theta_1}\)と屈折角\(\large{\theta_2}\)の間には以下のスネルの法則が成り立ちます。
$$\large{\frac{n_2}{n_1}=\frac{\sin \theta_1}{\sin \theta_2}\hspace{15pt}(1)}$$(1)のスネルの法則から、入射側の屈折率\(\large{n_1}\)が、透過側の屈折率\(\large{n_2}\)より大きいとき\(\large{(n_1 > n_2)}\)、入射角\(\large{\theta_1}\)より屈折角\(\large{\theta_2}\)の方が大きくなります。
図1に、入射側の屈折率\(\large{n_1}\)が、透過側の屈折率\(\large{n_2}\)より大きい場合の光の屈折、反射の様子を図示します。
このとき、屈折角が\(\large{\theta_2 < 90^{ \circ }}\)を満たす範囲では、図1のように、透過光と反射光の2つの光路が存在します。
一方、屈折角が\(\large{\theta_2=90^{ \circ }}\)となる条件では、以下の図2のように、透過光が発生せず、反射光のみとなります。
透過光が存在せず、反射光のみが存在している状態を全反射といいます。
また、全反射が発生する入射角を臨界角\(\large{\theta_c}\)といいます。詳細は後述しますが、臨界角の大きさは屈折の前後の屈折率により決定されます。
全反射が発生する条件をまとめると以下のようになります。
・入射側の屈折率が\(\large{n_1}\)、透過側の屈折率が\(\large{n_2}\)のとき、\(\large{n_1 > n_2 }\)を満たす
・入射角\(\large{\theta_1}\)が臨界角\(\large{\theta_c}\)以上の角度をもつ
また、全反射が発生するとき、境界面から透過側の媒質に光が染み出すエバネッセント波という現象が発生します。 詳しくは、別のページで解説しています。
全反射の発生する最小の入射角を臨界角\(\large{\theta_c}\)(critical angle)といいます。
本章では、臨界角の求め方や公式、臨界角の例について説明します。
(臨界角を計算するツールを別のページで作成しています。)
先述したように、全反射は屈折角が\(\large{\theta_2 = 90^{ \circ }}\)となる条件で発生します。
したがって、臨界角の求め方はスネルの法則(1)式において、屈折角\(\large{\theta_2=90^{ \circ }}\)のとき、入射角\(\large{\theta_1=\theta_c}\)とすることで、臨界角\(\large{\theta_c}\)を求められます。
\begin{eqnarray}
\large
n_1 \sin \theta_c&=&\large {n_2 \sin (90^{ \circ })}\\
\large
\sin \theta_c&=&\large {\frac{n_2}{n_1}}\\
\large
\theta_c&=&\large {\sin^{-1} \left(\frac{n_2}{n_1} \right)}
\end{eqnarray}
水(屈折率\(\large{n=1.33}\))と空気(屈折率\(\large{n=1}\))間の臨界角について考えます。
透過側の屈折率が入射側より大きいという全反射の発生する条件から、臨界角が存在するのは、水から空気に光が入射したときになります。
水(\(\large{n_1=1.33}\))から空気(\(\large{n_2=1}\))に光が入射したときの臨界角\(\large{\theta_c}\)を求めると、以下のように約48.8°になります。 $$\large {\theta_c=\sin^{-1} \left(\frac{n_2}{n_1} \right)=\sin^{-1} \left(\frac{1}{1.33} \right) \approx 48.8[°]}$$
ここで、表1に光が物質中から空気に入射したときの臨界角の計算値の一覧を示します。
屈折率\(\large{n_1}\) | 臨界角\(\large{\theta_c}\) | |
---|---|---|
水(20℃) | 1.33 | 48.8 |
石英ガラス | 1.46 | 43.2 |
水晶 | 1.54 | 40.5 |
ダイヤモンド | 2.42 | 24.4 |
表1に示すように、より屈折率の高い媒質から空気に入射する方が、臨界角\(\large{\theta_c}\)が小さくなることが分かります。
表1より、ダイヤモンドは、ガラスと比較して全反射が発生する角度が約半分となります。
ダイヤモンドが強い輝きを放つ理由として、ダイヤモンドが高い屈折率を持つために臨界角が小さく、内部で全反射を発生させやすいためと説明することができます。
本章では、全反射を利用した応用例について解説します。
全反射が応用されている例として、顕微鏡やカメラのファインダー内のプリズムに全反射の現象が利用されています。
例えば、図3のように光線に対してプリズムの斜面を45°傾けて配置すると、プリズムの斜面と空気の間で全反射が発生し、光線の進行する角度を変えることができます。
全反射を利用するメリットとして、極めて高い反射率が得られる点にあります。
例えば、金属の表面の反射を利用したアルミミラーは可視光域で約80~90%程度の反射率ですが、全反射を利用すると100%の反射率を得ることができます。(ただし、光がプリズムに入射するときの反射による損失や、プリズム内の散乱や吸収による損失は存在します。)
光ファイバーが光を伝達する原理には、全反射が利用されています。
図4に光ファイバーの簡単な模式図を示します。光ファイバーは中心にコアという透明媒質と、その外側をクラッドという透明媒質が覆うような構造になっています。
光ファイバーは、コア内を進行する光を、コアとクラッドの境界で全反射させることで光を伝達させます。
ここで、外部から光を取り入れたとき、光ファイバー内で全反射が発生するための入射角\(\large{\theta_0}\)の条件を求めます。
屈折率\(\large{n_0}\)の媒質から角度\(\large{\theta_0}\)で光ファイバーに光が入射したとします。
また、コアの屈折率を\(\large{n_1}\)、クラッドの屈折率を\(\large{n_2}\)、コアからクラッドに入射するときの入射角を\(\large{\theta_1}\)とします。
まず、全反射が発生する場合、クラッドの屈折率\(\large{n_2}\)に対してコアの屈折率\(\large{n_1}\)が大きい必要があるため、以下の関係を満たすとします。 $$\large{n_1>n_2}$$
スネルの法則から、コアとクラッド間において以下の式が成り立ちます。 $$\large{\frac{n_2}{n_1}=\frac{\sin \theta_1}{\sin \theta_2}}$$ 上式から、コアとクラッドの境界における臨界角を\(\large{\theta_c}\)とすると、以下の式を満たします。 $$\large{\sin \theta_c = \frac{n_2}{n_1}\hspace{20pt}(1)}$$
ここで、外部から光ファイバーへの入射角\(\large{\theta_0}\)と、コアからクラッドへの入射角\(\large{\theta_1}\)の関係は、スネルの法則より以下のようになります。 $$\large {n_0 \sin \theta_0 = n_1 \sin {\left(\frac{\pi}{2}-\theta_1 \right)}\hspace{20pt}(2)}$$
上式の右辺を変形すると、以下のような式となります。
したがって、\(\large{\theta_1 = \theta_c}\)を満たすとき、(1)~(3)式より以下が成り立ちます。 $$\large{ n_0 \sin \theta_0 = n_1 \sqrt{1-{\left(\frac{n_2}{n_1}\right)}^2}}$$ 上式を整理すると、以下のようになります。 $$\large{ \sin \theta_0 = \frac{1}{n_0} \sqrt{{n_1}^2-{n_2}^2}}$$
以上から、外部から光を取り込んだときの、光ファイバー内で全反射が発生するための入射角\(\large{\theta_0}\)の条件は、以下のようになります。 $$\large {0 < \sin \theta_0 \leq \frac{1}{n_0} \sqrt{{n_1}^2-{n_2}^2}}$$